Q19 定款、規約、規定等に関する質疑 | Q19-1 規則、規約等の定義について
協同組合の運営上、諸規約諸規程の設定は必要欠くべからざるものであるが、これらを作成するに当たって次の原則的な説明と相違点並びにその使用される場合の事例をお知らせ願いたい。
(1)規則とは
(2)規約とは
(3)規程とは
(4)規定とは
規約、規程については必ずしも明確な区別はなく、混同して使用されているので、一般的に定義づけることは困難であるが、従来の慣習並びに字義により区別すれば大要次のとおりと思われる。
(1)規則とは、広義に規則という場合、諸々の事項を規定した例えば定款とか規約とか、規程等を総称していわゆる「さだめ」をいうが、最狭義に規則という場合は国の立法機関としての国会以外の機関が制定する成文法=それらは名称を規則というだけで必ずしも法的性格を等しくするものではない=をいい、現在、最高裁判所や衆・参議院等特定の諸機関が規則制定権を認められている。なお各大臣が主任の行政事務について発する命令が規則という形であらわれていることもある。
(2)規約とは、例えば協同組合等が組合の業務運営その他一定の事項に関し、組合と組合員間を規律する自治法規であって定款と同様、総会において決められるべき性質をもったもので、選挙規約、委員会規約、金融事業規約、共同購買事業規約等がある。
(3)規程とは、例えば協同組合が組合の事務、会計その他に関して定める内部的な規律であって、主として事務遂行上必要な関係を規律する内規律的なもので、理事会等に諮り決定し得る性質をもつもので、文書処理規程、服務規程、経理規程、給与規程等がある。
(4)規定とは法律、定款、規則、規約、規程などの条文に定められている個々の内容をいい、普通は条文の内容を指すものと考えてよい。 Q19-2 組合諸規程の決定機関
本組合では、組合運営に必要な規程類を現在作成中であるが、下記のものは総会の承認を得る必要があるものか、理事会の決定のみにてよいものか教示願いたい。
・文書処理規程
・服務規程
・人事規程
・給与規程
・退職金規程
・昇給規程
・旅費規程
組合の文書処理規程、服務規程、人事規程、給与規程、退職金規程、旅費規程等、主として組合の業務執行上必要な関係を規律する内規的なものの決定は、理事会の議決をもって足り、総会の議決を経る必要はない。
ただし、給与規程、退職金規程が常勤等の役員に適用される場合は、理事会の決定では事柄の性質上適当でないので、総会の議決を経て決定するのが望ましい。
なお、役員選挙規約、共同施設利用規約(実際には役員選挙規程、共同施設利用規程といっている場合が多い。)等組合の業務運営その他一定の事業執行に関し、組合と組合員間を規律する自治法規的なものについては総会の議決を経て決定しなければならない(中協法第34条)。 Q19-3 副理事長の職務権限に関する定款記載について
副理事長の職務権限は定款に明記する必要があるか?
副理事長の業務分掌を定款に記載すべきかどうかについては、定款が組合の組織運営に関する基本的な自治法規である点にかんがみ、理事長及び専務理事と同様に定款に記載すべきものと解する。
事業協同組合の定款例においてもこのような観点から定款に明記するよう指導しているので申し添える。 Q19-4 職員に関する規定の定款例
事業協同組合定款例の職員に関する規定について次の点を回答されたい。定款例第33条(参事及び会計主任)と同34条(その他の職員)の規定は、なぜ同一条文にならないのか?
参事及び会計主任は、組合の使用人であるが、実質的には代表理事の補佐役(特に参事は組合に関する一切の代理権を有する)としての重要な地位を占め全組合員の利害に重大な関係があるので、その他の職員とは別条にしているのである。 Q19-5 職員に関する規約等について
某信用組合においては、職員設置規定を定款より削除し、すべて「規程」によりたい考えであるが、次に事項について回答頂きたい。
(1)定款の職員設置条文は、職員の身分保全のためにも、残した方が良いのではないか?
(2)「規程」は、組合内部業務執行事項で理事会により決定され、人事については総代会の意志反映が全くなくなるので、人事規程を「規約」として総代会承認事項とするのが指導上適当でないか?
(1)職員の設置規定は、定款の任意事項で記載するか否かは、組合の自由であるが、職員を設置する組合においては、職員という機構を置くことであり、定款に職員をおくと定めることが望ましい。
(2)人事権の伴わない経営の執行はあり得ないことであり規約として総代会の承認を必要とさせることは、このような理事会の業務執行に関する権限を大幅に縮少させることにもなりかねないので好ましいことではない。したがって、仮りに総代会において定めるとしても、事務組織などの基本原則に止めることが適当である。
なお、労働基準法においても使用者の概念は業務執行者である代表理事を指しており、労務契約についての権限は総代会にあるよりも理事会におくことが望ましい。 Q19-6 議決権・選挙権に関する定款記載方法について(協業組合)
議決権、選挙権に出資割制を認める場合の定款の記載方法については、模範定款例に「組合員は、それぞれの出資持口数に何を加えた議決権及び選挙権を有する。」とあるが、加えるべき数は整数によらなければならないか。
整数を加えることとすれば、議決権、選挙権については、出資口数割の議決権等の総数は平等割の議決権等の総数を超えることができないので、組合員の移動、出資口数の変更等によって、定款変更しなければならないケースが多くなる。
協業組合の場合は、平等の議決権等のほかに、出資に比例して議決権等が認められ、出資比例議決権数が制限されているので、定款の記載について、質問のような整数による確定数を記載すると、組合員の移動や出資の増加等によって、この制限を超える事態も当然予想され、定款変更がその都度行われなければならないことになる。
これについての定款規定は、議決権等を行使する際に各組合員が有している議決権等を算出できるものであれば良く、必ずしも整数による確定数を記載する必要はないと考える。
この場合に、定款の記載をどのようにすれば良いかであるが、一つの参考をお示しすると、次のような内容でよろしいのではないかと考える。
〔例〕 第○条 組合員は、それぞれの出資持口数に、各組合員に平等に与えられた議決権数を加えた数の議決権及び選挙権を有する。
2 前項の各組合員に平等に与えられる議決権数は、出資総口数を組合員の総数で除して計算した数より大きく、その数に最も近い整数とする。
(注) 平等割の議決権(選挙権)数を、前項よりも多くする場合は、第2項を次のように記載する。
2 前項の各組合員に平等に与えられる選挙権数又は議決権数は、出資総口数を組合員の総数で除し、その除して計算した数に何を加えた数とする。この場合において、少数点以下の端数がでたときは切り捨てるものとする。
(注) 加えるべき数は、平等割の議決権数等を何個にするかによって適宜記載する。 |
Q20 役員に関する質疑 | Q20-1 役員(理事)と組合との関係
理事と組合との関係は民法第643条の委任によるものか?
中協法第42条において準用する商法第254条第3項の規定により、組合と役員(理事又は監事)との内部関係は民法上の委任契約に関する一連の規定が適用される。
従って、組合と理事との関係は当然に民法第643条~第656条の規定に拠るところになる。 Q20-2 理事の自己契約について
中協法第38条(理事の自己契約)について、次の場合理事会の承認を必要とするかどうか?
(1)法人の代表者として貸し出す場合
(2)第三者の保証人として貸し出す場合
(1)中協法第38条の趣旨は、理事がその地位を利用して組合に損害を与えることを防止することにあることから、理事会の承認が必要であるものと解する。
(2)理事が第三者のために保証契約を組合と結び、当該第三者に貸し出しする場合、保証契約については保証人たる理事は、弁済の能力あることを必要とし(民法第450条第1項第2号)、この要件は、組合が保証人を指名しない限り必要とされている(同条第3項)。
このように理事と組合との保証契約が組合に不利益となる場合もあり、理事と組合との取引によって組合に損害を与えることを防止しようという中協法第38条の趣旨から、理事会の承認を受けるべきものと解する。 Q20-3 役員の責任とその解除について
(1)代表理事の行った会議費及び交際費の使途につき、理事会、監事、総会において承認を受けたものが、その後(翌年)使途が組合に不要のものであることが判明した。これにつき、組合は損害賠償の請求ができるかどうか?
前項の行為は、代表理事の独断的行為であるが、損害賠償の場合は、当該代表理事の責任に止まるか?あるいは、理事、監事ともに連帯して賠償の責任があるか?
(1)会議費、交際費の支出は理事長の業務執行に属するもので、あらかじめ理事会で決定されるべき性質のものではなく、代表理事以外の理事については責任がないとする見方があるが、代表理事の業務執行といえども職務に違背する不当な行為については未然にこれを防止し、もって組合の利益をはかるいわば総合監視の義務があるので、理事としてこの任務をけ怠し組合に損害を与えたとするならば、連帯して賠償する責任がある。
また、監事についても、善管義務を怠り計算書類の不正を看過した場合には、理事と共に連帯して損害賠償しなければならない。
(2)上記の行為を行った代表理事が、使途につき捏造した理由を付し弁明すれば、その行為は止むを得ないとすべきか?
(2)交際費、会議費の使途について代表理事が捏造した理由を付したか否かに関しては、いわゆる道義上の問題として解決する場合は別として、理事の忠実義務違反に係る損害賠償請求の訴に伴う問題として裁判所が判断するものである。
(3)理事、監事の決算書類に関する責任は総会後何年か?
(3)理事及び監事の決算関係書類に関する責任は民法の一般原則(第167条第1項)に従い、10年の時効にかかることになっている。
なお、理事、監事とも総組合員の同意があれば責任の解除ができることとなっている(商法第266条第5項の準用)。 Q20-4 役員重任禁止の是非
役員の選挙規約に「4期連続して役員となることはできない」旨定めることは差し支えないか?
選挙権の平等の組合原則は、一方、被選挙権の平等を意味するものと解される。
したがって役員重任禁止の規定は、被選挙権を拘束するものであり不適当と考える。 |
Q21 員外役員に関する質疑 | Q21-1 員外理事の資格について
(1)組合員の後継者で組織する青年部の役員を組合理事として登用し、役員の若返りと、組合事業の活性化を図りたいと考えている。
青年部の役員は組合員企業の役員になっている者が多いが、個人事業者の後継者である者やまだ組合員企業の役員になっていない者もいる。これらの者を役員にすることができるように定款に「員外理事」の規定を設けたいが、その際「員外理事」を組合員の後継者である青年部の役員に限定する規定にすることは可能かご教示願いたい。
(1)中協法では、員外理事の定数については、第35条第4項により員外理事の組合業務運営の支配を避けるために一定の制限を付している。しかし、員外理事の資格については、中協法では特に制限規定は設けていないので、中協法の趣旨及び公序良俗に反しない限り組合が自主的に定めうるものと解される。
ご質問のように、員外理事を組合員の後継者に限定することは、組合運営が組合関係者のみの運営となり、法の趣旨に反するものではないので差し支えないと思料する。
中協法で「員外理事」を定めた趣旨は、「正規理事(員内理事)」が自己の企業の事業もあることから、組合の事業運営に専念し得ない恐れがあり、他方員外からも広く人材を起用することが望ましいという点にある。
員外理事の資格を組合青年部役員である組合員の後継者に限定するのもひとつの方法であるが、組合事業運営に精通した人材を広く外部から起用することも考えてみる必要があると思われる。
(2)役員選挙で、合資会社の有限責任社員から理事選挙に立候補したい旨の通知がありました。
同社員は、組合事業にも精通し、他の組合員からも信頼された人物なので理事として積極的活動をお願いしたいところであるが、組合員の一部から、同社員に理事となる資格はないのではないかとの意見があった。その理由は、組合の定款では「員外理事」を認めていない規定になっているので、「法人の役員」でない同社員にはその資格がないから定款違反になるとのことである。
どのように解釈すればよいか。
(2)中協法でいう「組合員たる法人の役員」とは、その法人において、その業務執行、業務・会計の監査などの権限を持つ者と解されます。つまり、物的会社の取締役・監査役、人的会社の業務執行社員などがこれにあたる。
人的会社である合資会社では、「無限責任社員」が原則として会社の業務執行及び会社代表の権限を有する(商法第151条、第76条)のに対し、「有限責任社員」は、経済的には無限責任社員の経営する事業に対して資本的関係においてのみ参与し、その事業より生ずる利益の分配にあずかるにすぎないものであるとされ、業務執行及び会社代表の権限を有しないものとされている(商法第156条)。しかし、実際には合資会社の定款の規定をもって有限責任社員に対内関係における業務執行権を与えるケースがみられ、通説・判例もこれを支持している。
このようなことから、同社員が組合役員になるには、当該合資会社の定款によって業務執行権を認められた有限責任社員となるか、そうでなければ組合の定款を「員外理事」を認める形に変更することが必要となる。
Q21-2 員外理事の代表理事就任について
事業協同組合において、員外の理事が代表理事になれるか?理事長、専務理事が共に員外である場合はどうか?
員外理事は、組合事業に専念できる者を得るために設けられた制度であることから、代表理事になることは差し支えない。しかしながら組合は組合員のための組織であることを考慮すると組合の長は組合員のうちから選任されることが好ましい。
また、理事長、専務理事が共に員外理事であることは一般的には避けるべきであるが、特別の事情でそれが組合運営に却ってプラスとなるのであれば、一概には排除すべきことではないと考える。
Q21-3 員外監事について
役員たる監事は組合員中より選任すべきか?また、組合員外から選任することができるか?
事業協同組合の役員たる「監事」の資格は、組合員たると以外の者たるを問わないので員外から選出することができる。 Q21-4 員外役員の定めなく員外役員をおくことの可否
協同組合が員外役員をおく場合、次のいずれをとるべきか?
(1)員外理事を置く旨定款に定めなくとも、員外役員を置かない旨の規定がなければ、理事の定数の3分の1までは置くことができる。
(2)員外役員を置く旨定款に定めなければ、員外役員は置けない。
設例については、法律解釈上は、理事の定数のうち3分の2までは必ず組合員又は組合員たる法人の役員であることを充たせば貴見(1)の通りであるが、貴見の(2)の見地を加味して、員外役員をおく場合は、定款には理事の定数の下限の3分の1以内において「何人」と確定数を記載することが員外役員に関する事項を明確にさせるうえから望ましい。 |
Q22 役員の任期に関する質疑 | Q22-1 役員任期に関する定款変更認可等について
総会において、理事及び監事の任期を1年延長する目的をもって理事及び監事の任期を「2年」とあるのを「3年」にそれぞれ定款の変更を決議(組合員110名、出席者数65名、全員賛成)した場合において、次の各号に該当するときは、適法であるか?
(1)理事及び監事の任期中(現在2年)に改正した場合、そのまま理事及び監事の任期は延長(更に1年)されると解して差し支えないか?
(2)6月27日に任期満了する理事及び監事が同日本文の定款変更が決議された場合において7月12日に上記定款変更認可申請書の提出があり同日これを認可したときは、理事及び監事の任期が6月27日現在をもって満了し、自然退任すると解し、新たな選挙を必要とするか?
(3)前号の定款変更認可申請書の提出があった場合において、その定款変更箇所を運営指導として、一定の条件(例えばこの規定は平成〇年6月27日から適用する、と記載した場合等。)を付記させて認可しても差し支えないか?
(1)設問1については、定款変更は認可により効力を生ずるため、任期中に認可があれば貴見の通り解しても差し支えない。
(2)設問2については、定款は認可により効力を生ずるため、認可以前に任期が来た理事及び監事は自然退任となり、新役員の選挙を行わなければならない。
(3)設問3については、中協法においては設例のような遡及して効力を発生しようとする意思ないし行為を認可することはできないものと解する。 Q22-2 役員の任期の起算日について
今年の5月28日に開催された通常総会において理事に選出され、就任を承諾した場合、2年後の任期満了日は、5月28日か、あるいは5月27日か。組合の定款では、任期は「2年」となっている。
理事などの役員の任期は、中小企業等協同組合法第36条により「3年以内において定款で定める期間」と定められているが、この役員の任期の起算は、民法の規定に従わなければならない。民法では、次のように規定されている。(期間の起算点(2)) 「第140条期間ヲ定ムルニ日、週、月又ハ年ヲ以テシタルトキハ期間ノ初日ハ之ヲ算入セス但其期間カ午前零時ヨリ始マルトキハ此限ニ在ラス」
ご質問では、5月28日に就任できる状況(前任者の任期が切れているか、辞任届が提出されている等の状況)にあると思われるので、就任日は、5月28日であるが、起算日は前記の民法第140条の前段により「期間の初日は算入されず」、翌日(29日)から起算されることとなり、2年後の平成7年5月28日が満了日となります。
なお、総会開催日である5月28日に現任者の任期が満了となるため、翌日の29日に就任するような場合は、民法第140条後段により、29日の「午前零時より」任期は始まるので、就任の初日である29日は期間に算入されることとなり、2年後の任期満了日は、5月28日ということになる。 Q22-3 役員任期の延長による現役員の任期
役員の任期が定款変更により延長された場合に変更時の役員の任期については、変更時の役員は就任時の委任契約に基づくので、新たな任期に拘束されないとの説があるがどうか?
組合と役員との関係は委任契約であるが、定款は組合及び役員を拘束する法規性を有しているから、役員は委任契約よりも定款に拘束され、定款変更による延長された任期に従わなければならないと解する。 Q22-4 全役員辞任の場合の新任者の任期について
役員の全員が任期の途中において辞任したとき、後任者の任期は、前任者の残任期間であるか?それとも新たに任期を起算すべきか?
定款に定められた役員の任期は役員に選任された個々の人に与えられる在任の期間である。
従って、残任期間の定めがなければ補欠の役員に対しても定款による任期が与えられる。しかしながら、一般的に全員の役員の任期をそろえるための技術的な方法として残任期間の定めを設けるのが通例となっている。この場合のように役員の全員が辞任した場合には補欠の役員という概念がなくなるし、また、残任期間の定めにより任期をそろえる必要もないので、残任期間の定めにかかわらず新たに任期を起算できるものと解する。 |
Q23 役員の残任義務に関する質疑 | Q23-1 辞任した役員の残任義務について
組合の定款では、理事の定数を「6人以上8人以内」と定めており、当初総会で6人を選出していたが、今回1人の辞任者がでた。
組合では、中央会の指導により、この辞任者については残任義務があるとの解釈をしていたが、たまたまある弁護士に相談したところ、中央会の見解と異なるため、その根拠についてご説明いただきたい。(弁護士見解)商法第258条第1項欠員の場合の処置(残任義務)、同法第498条第1項18号では補充義務が規定されており、これらの規定は、法律又は定款所定の取締役の員数の最低限を割った場合のみ適用され、法律又は定款所定の最低員数の取締役が存在している場合は、株主総会において実際上選任されている員数を欠いても適用されない。
しかし、一方においては中協法第35条第6項では、一定の範囲内(下限の1/3を超えない範囲)において補充義務を免除している。本来、補充義務と残任義務とは表裏一体の関係にあり、一方を免除し一方のみを課すのは妥当とはいえない。また、補充義務だけを免除し、残任義務を課す合理的な理由も考えられない。以上の理由から今回のケースについては、組合に補充義務もなければ、辞任者について残任義務はないものと判断される。
組合における理事の定数は、組合の規模、事業内容等に応じ組合の業務執行上必要な人数を定款で定めたものであり、常に定数を充たしておくべきものである。
理事の定員数が定款上の定数に不足することは、そのこと自体定款違反の状態であり、この場合当該組合の理事は法に定められた定数の遵守義務規定(中協法第42条で商法第254条の3を準用)の上からも速やかに理事の欠員分を補充する手続きをとらなければならない。
また、中協法が第35条第6項において、商法第498条第1項第18号と異なる補充義務規定を置いているゆえんは、役員に欠員が生じた場合には、組合の業務運営上、早急に補充すべきであるが、特に欠員が3分の1を越えた場合には3カ月以内という期間を限って補充義務、すなわち、同項は決して定数の3分の1を超えた欠員が出るまでの補充義務を免除したものではない。
したがって、設例の場合は定款で定める理事定数(6人)を1人でも欠いた場合は、直ちに該当理事者に残任義務が発生するものというべきで、罰則を伴った補充義務規定がないことを理由にこれを否定すべきものではないと考える。
なお、定款において理事の定数に幅をもたせている場合において、下限の人員を選出すると、今回のような事態も生じやすく、「6人以上8人以内」として理事に2人の余裕をもたせた意味がなくなるので今後は定数の上限を選出するようにされたい。 Q23-2 代表理事の資格と残任義務について
事業協同組合の代表理事が任期途中で理事を辞任してしまった。
(1)この代表理事は、理事としての退任によって代表理事の地位をも失うことになるか。
(2)もしそうだとすると、その代表理事の残任義務はどのようになるのか。
(1)代表理事については、中小企業等協同組合法(以下「組合法」という。)は、商法規定を準用しており、理事会において理事の中から選任することとなっている(商法第261条←中協法第42条)。
したがって、代表理事は理事であることを前提としますから、理事の任期満了、辞任、解任などにより理事を退任した場合には、代表理事をも当然に退任することになる。
(2)理事の残任義務についても、中協法では商法規定が準用されており、理事の退任によって理事に欠員(定数割れ)を生じた場合には、任期満了又は辞任による退任者は、後任者が就任するまで引き続き理事としての権利義務を有することになっているが、代表理事についてもこの規定が準用されています(商法第258条第1項←商法第261条第3項←中協法第42条)。
ご質問の場合に代表理事としての残任義務があるかどうかについては、次の3つのパターンに区分してみる必要がある。
すなわち、
(イ)その退任によって、理事・代表理事ともに欠員を生じた場合には、退任者は理事としての残任義務を負うと同時に、代表理事としての残任義務をも負うことになる。
(ロ)また、その退任によって、理事の定数を欠いても、理事会の選任により代表理事には欠員を生じない場合には、退任者は単に理事としての残任義務を負うにとどまり、代表理事としての残任義務はない。
(ハ)その退任によって、代表理事の定数を欠いても、理事には欠員を生じない場合には、一見、代表理事に欠員を生じているので、退任者は代表理事としての残任義務を負うかのようであるが、この場合には、退任者は理事としての権利義務者ではないのであるから、代表理事の地位が理事の資格を前提とする法の趣旨からして、代表理事としての残任義務はないとされている。 Q23-3 役員の残任義務及び役員報酬の支給について
副理事長を1名から2名に増員し、専務理事1名を減員した定款変更を総会で議決した場合、役員の残任義務及び役員報酬の支給は次の例ではどう扱うべきか?
【例示】
(1)定款変更議決の総会開催日平成3年5月18日
同上総会では任期満了(○○年4月30日)に伴う理事の選挙を行い専務理事であった者が落選した。
(2)理事長、副理事長(増員1名を含む)2名の選出の理事会開催日○○年5月22日
(3)定款変更認可申請日 ○○年7月22日
(4)定款変更認可日 ○○年7月30日
以上の場合
1.従来専務理事であった者の残任期間は何月何日か?また、専務理事への役員報酬は何日分まで支給すべきか?
2.増員1名の副理事長の役員報酬は何月分より支給すべきか?
専務理事の残任期間は、新たな役員が選任された5月18日までとなる。また、役員報酬は、本来総会で選任された役員についての報酬であるべきであるが、税法上役員報酬は、相談役、顧問等実質的に経営に従事しているものを含むとされていることから、残任義務期間の役員は、法律上の役員ではないが、役員と同等な権利義務を有し、実質的にも組合の経営に従事しているので役員報酬の支給対象となる。
したがって、設問の専務理事の役員報酬は、4月1日(事業年度が4月1日に開始の場合)から5月18日までの期間の間で役員報酬規程等に照らし、新事業年度の役員報酬の予算の枠内で支給して差し支えない。
次に増員された副理事長の役員報酬は、定款変更が効力を発生する認可日である7月30日から支給することになる。 Q23-4 役員報酬の請求権
役員としての報酬を受けていた某組合の専務理事が在職中にもかかわらず、理事会と意見の対立が原因で、その支払を停止されたが、この理事は不払部分について組合に請求できるか?
請求できるとして、組合がその支払いを拒んだ場合はどうしたら良いか?
組合と理事とは委任関係にあるから、委任者である組合(執行機関たる代表者に該当)と受任者である当該理事との間に報酬支払の特約があれば、その契約が解除されていない限り、中協法第42条において準用する商法第254条第3項で準用する民法第648条の規定により、当該理事は組合に対し報酬支払の請求権をもつ。
また、組合がこれに対して支払を拒む場合は、民事訴訟手続により90万円を超えない請求であれば簡易裁判所、これを超える場合は地方裁判所に、それぞれ「役員報酬請求の訴え」を提起することとなる。 |
Q24 役員の定数に関する質疑 | Q24-1 役員の定数について(その1)
中協法第35条において役員の定数は「理事は3人以上、監事は1人以上」と定められているが、その定数の上限は第何条に規定されているのか?
例えば、ABCDの4法人が協同組合を組織するに当たって理事、監事の定数の上限の決定の方法として、単記式投票によれば組合員1人1票の原則により理事、監事各々最大4人まで選出できることとなるが、連記式投票による場合は組合員総数を上回る多数の役員を選出することが可能になる。定款にて役員の定数は決定しているので単記、連記いずれを採用しても役員の総数は同一でなければならない。故にその両方の限度内で組合内容に適した方法で選ぶべきであると解釈しているが如何?
中小企業等協同組合の役員の数は、中協法第33条1項第11号の規定により、定款の絶対的必要記載事項として、必ず、何人以上何人以内という定数で定款に定めなければならないことになっているが、その数は、同法第35条第2項に規定する数以上であれば、何人であろうと法令違反にはならない。
役員の定数を定める場合、設問のごとく単記式無記名投票によって選出し得る最大限の数(組合員数)を、その組合の理事及び監事の定数の上限として、その範囲内において、単記式、連記式のいずれかを採用すべきであると解して画一的に指導することは無理がある。設例のように組合員数が4人である組合においても、組合の業務運営において組合員数を上回る役員が必要とされる場合も考えられるので、指導としては当該組合の事業規模、役員の業務分担を考慮し、業務の迅速適格な遂行を妨げることとならないよう、必要かつ最少限度の役員の数を定め、その数を選出するについて、単記式、連記式のいずれを採用することが妥当であるか検討されるべきである。 Q24-2 役員の定数について(その2)
中協法第35条第6項に「理事又は監事のうち、その定数の3分の1を超える者が欠けたときは、3箇月以内に補充しなければならない」となっているが、
(1)定数とは何を指すのか?
(2)本組合の定款変更案では役員の定数及び選任について「本組合の役員は理事25人以上30人以内、監事3人又は4人とする。」としてあるが、この場合上限の理事30人の3分の1つまり10人まで欠けても補充選挙しなくともよいと解しているが如何?但し25人と下限を決めているのでこの場合は5人まで欠けて25人になっても補充選挙の必要はないか?
次に監事の場合上限4人の3分の1つまり1人を欠けても補充選挙の必要はないか?
(3)法定数とは何か?この場合25人と解してよろしいか?
(1)定数については従前は確定数をもって定めることとしたのであるが、役員の死亡等により欠員を生じた場合に、その都度選出することは、事実上不便を生じることが多く、実態にそぐわない点もあるので「何人以上何人以内」を定数としている。
(2)役員補充の場合における取扱いについては、中小企業庁では定款に記載した下限を基準とすることにしているので、設例の場合25人の3分の1以上、即ち9人が欠け16人になった場合に補充選挙の必要が生じてくることになる。
監事の場合も同様に下限の3人の3分の1以上が欠けた場合に補充義務が生ずることになる。
(3)上述の趣旨から「何人以上何人以内」を法定数といい、設例の場合は「25人以上30人以内」が法定数であって、下限の25人をもって法定数とはいわない。 Q24-3 理事の定数を減員する場合の方法について
次の役員改選を機に、理事の定数を現在の8名から7名に減員したいと考えていますが、どのような方法で行えばよいでしょうか。
理事の定数を減員する場合には、予め、理事定数の変更に伴う定款変更のための総会(総代会を含む。)を開催し、そこで定款変更の決議を行い、行政庁の認可を受けたのち、役員改選のための総会を開催し、新定数(7名)による理事を選出するという方法がまず考えられます。ただし、この方法によりますと、短期間のうちに2度総会を開催しなければなりませんので、現実の対応が困難な場合も見受けられます。
そこで、実務上定款変更決議と役員改選を同一総会において行うことが要請されるわけですが、これには次の2つの方法が考えられます。
1つは、定款変更決議後、ただちに未認可の変更定款(新定款)により新役員を選出するが、その就任については停止条件を付し、全員が定款変更の認可後に就任するという方法です。
2つは、定款変更後、現行(変更前)定款により8名の新役員を選出し、全員ただちに就任するという方法です。ただし、この方法による場合は、定款変更認可後に、定款規定(7名)と現行役員数(8名)との間に相違が生じますので、調整が必要となります。この調整の方法としては、超過する員数の役員に自発的に辞任してもらうか、あるいはその役員の任期に、定款変更の認可日までとする旨の解除条件をつける(つまり、一部役員の任期を制限する)方法が考えられますが、この解除条件は、役員選出前に、定款変更と同じ特別議決によって決議しておく必要があるでしょう。 |
Q25 代表理事、表見代表、参事等に関する質疑 | Q25-1 代表理事を総会で選任することについて
総会において理事を選挙する際、代表理事を特定して選挙することができるか?
たとえば理事の定数は5名であるが、そのうち1名は代表理事となるので、選挙の際代表1名、代表権のない理事1名として総会で直接選挙したり、あるいは、選挙は普通に5名を選挙するが、最高得票者を代表理事とすることを条件として行うような選挙方法をとってよろしいか?
理事一般については、組合と委任契約を締結するのであるから(中協法第42条において準用する商法第254条第3項)中協法においては、総会で選挙する旨を規定しているが(中協法第35条第3項)、代表理事は、理事会を構成する他の理事との信任関係に立ちながら、理事会で決定された組合の業務の執行を正確に実施するところの組合の代表機関であると解される。
したがって、この趣旨から代表理事は、理事会において選任すべきものとして中協法第42条で商法第261条第1項の規定を準用している。いわば代表理事の選任は理事会の専決事項であるから、これを直接総会で選挙することはできない。 Q25-2 協同組合に会長制を設けることの是非
事業協同組合において、過去に理事長の職にあった者のうちから会長を選任し、代表理事の権限の若干を行わせる会長制を設けたいとの相談があった。これは可能か?
ご照会の会長の身分あるいは職務権限の詳細が不明であるが、そのような会長は対外的には少なくとも表見代表とみなされ、また、一般的には組合の管理面において理事長との権限の分担等が複雑になり内部の統一が損なわれるおそれがある。
したがって、ご照会のような会長制を設けることは、法的には不可能ではないが、運営上好ましくなく、理事又は顧問として協力を得るのが適当である。
しかしながら、中協法においてこれを禁止する規定はないので、会長制を設けることが組合の実体からみて運営上最良の方法であれば、これを設けることも妥当と思料するが、その適否は実体から判断すべきものであるので所管行政庁とも協議のうえ判断するのが適当と考える。 Q25-3 常任理事と表見代表とのかんけいについて
定款を改正するに当たり第27条第1項において「理事のうち14人を常任理事」とすることとしているが、常任理事なる呼称は表見代表と見なされるか?
理事長、副理事長、専務理事及び常務理事等一般の社会通念上組合を代表する権限を有するものと認められる名称を付した理事は表見代表理事と認められる(中協法第42条で準用する商法第262条)。
常任理事についても同様に代表権ありと認められる名称と解されるので、表見代表と見なされるものと考える。 Q25-4 参事と代表権を有しない常勤理事等の職能
代表権を有しない常勤理事は表見代表権者とみなされても業務の執行はできないものと解するが、一方参事は職員ではあるがその職務の代理権限は裁判上裁判外の広汎に及び、代表権のない常勤理事よりその職能範囲は広いものと解されるが如何。
参事は、組合に代わってその業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限、すなわち組合の事業全般に関する包括的な「代理権」を有している(中協法第44条第2項、商法第38条第1項)。
一方、代表権のない業務担当理事の権限は、理事会の構成員として業務執行の決定などに参画する理事としての一般的権限のほかに、理事会の決議又はそれに基づく業務執行の内容は、純粋に内部的な組合業務に限られ、少しでも組合外部に対する直接の関係を含む事項については、権限を有しない。
したがって、「職務権限の範囲」は、代表権のない業務担当理事の方が参事より広いが、「業務分担の範囲」という点では参事の方が広いと解する。
ただし、参事は職員の地位であり、その任免は理事会の決定によるので、理事以上の地位ということではない。 |
Q26 役員の兼職、顧問・相談役等に関する質疑 | Q26-1 理事の兼職禁止規定の解釈について
中協法第37条第2項の理事の兼職禁止規定は、非常に理解し難い複雑な規定であるので例をあげて説明願いたい。
本規定の趣旨から説明すると、理事は理事会を構成して組合の業務の執行を決定し、あるいは代表理事となって決定された業務を現実に執行しなければならない等組合運営の首脳部たる地位にあるので、組合事業の経営、その他の組合運営に関し機密に属する事項等も詳細に知っているわけであるが、理事自体が組合事業または組合員資格事業と実質的に競争関係にある事業を行っているとき(法人であるときは、その役員たる地位にあるとき)は、組合の業務運営を不利におとしいれることになり、組合の正常な発展を妨げたり、あるいは組合員に不利益をもたらすおそれがあるので、これを防止するために一定の競合関係にたつ者は、組合の理事となることを禁止したのである。
例をあげて第37条第2項の規定を説明すれば、
(1)いま織物製造業者を組合員資格とする組合があり、その組合の共同施設として染色整理業及び原糸の共同購入事業を行っている場合を仮定する。
この組合の原糸の共同購入事業を利用するために組合員となっているが、織物製造業を営みながら染色整理事業をも兼業して行ったとすれば、その者は組合員ではあるけれど理事への就任が禁止される。すなわち、組合の行う染色整理事業と例示した組合員の行う染色整理事業とは完全に競合するからである。
なお、上記組合員が、組合員となっていない員外者である場合でも、同様の趣旨から員外理事として就任することは禁止される。
(2)もし、この組合が織物製造業者と染色整理業者の両方を組合員資格として定款に定めていたとすれば、組合が染色整理の共同事業を行っていたとしても、例示した組合員の行う染色整理業は「組合員の資格として定款に定められる事業以外のもの」でなくなるので理事への就任が可能となる。
なお、この場合に例示した者が員外者であるときは、第2号によって判断される。以上が第1号の説明であるが、第2号は員外理事のみに適用される規定である。
理事になろうとする者が員外者である場合、
(1)の場合であれば、織物製造業を行う者は、大企業である限り、この組合の員外理事に就任することが禁止される。
(2)の場合であれば織物製造業を行う者も染色整理業を行う者も、大企業である限りこの組合の員外理事に就任することは禁止される。
中小企業者であれば就任が禁止されないのは、たとえ員外者であっても組合員と同様の状態にあるものと考えてよいからである。
なお「実質的に競争関係にある事業」とは、製造業と販売業あるいは卸売業と小売業のように縦の系列関係をいうのではなく、取扱商品が代替関係にある場合、たとえば綿スフ織物と絹人絹織物あるいは布レインコートとビニールレインコート等を指すものと解している。 Q26-2 役員の使用人兼職について
監事は理事又は使用人と兼ねてはならない事は明示されているが組合が使用する職員は理事となる事が出来るか否か、もし差し支えないとすれば、理事を職員として採用しても構わない事と解釈されるが職員の理事兼職について明示願いたい。
職員で選任された理事が一職員として引続き同一勤務に服する事が出来たとすれば身分は常勤理事であるが、一職員として取扱いをするものであるか?
中協法第37条第1項において禁止しているのは、次の場合、即ち、
(1)理事と監事、(2)監事と使用人(職員を含む)である。
監事は会計監査を通じて理事を監督する立場にあるもので、当然に両者の兼職は禁止される。
本条の結果、理事と使用人の兼職は差し支えないわけで、専ら専務に当たる理事が○○部長というような資格で事務担当者となる事は、従来もよく行われているところであり、これによって弊害のおこる事もないので禁止されない。選任された理事が、引き続き職員としての事務に勤務する場合、その職務は職員としての事務を担当する事となるが、通常の場合常勤理事である。 Q26-3 理事の参事兼職について
理事は参事を兼職することができるか?
監事は使用人と兼ねてはならないことになっているが(中協法第37条)理事については別段の定めがないので兼務は差し支えない。
ただし、実際問題としては理事が参事を兼ねる必要性は乏しく、その理事を代表理事とするか、専務理事又は常務理事とすれば足りると考える。 Q26-4 顧問・相談役・参与について
通常総会で、設立以来長年当組合の発展に貢献してきた代表理事が交替し理事としての職務も退くこととなった。理事会では、その功績をたたえるとともに、組合の役員ではないにしても、組合が必要とする時は、何時でも助言等を求めることのできる地位に置きたいと考えている。
中小企業等協同組合法では「顧問」を置くことができることとなっているが、前理事長を顧問に委嘱することは可能か。また、相談役・参与なども設けたいがどうか。
長年、組合の業務執行に携わっていた者が、組合の役員たる地位をはずれたからといって、その後、組合がその豊富な経験、知識等を活かした助言等を求めることができないということはないが、いつでも遠慮なく助言等を求めるためには、何らかの役職に委嘱しておくことも得策であると考える。
中小企業等協同組合法第43条では、「組合は、理事会の決議により、学識経験のある者を顧問とし、常時組合の重要事項に関し助言を求めることができる。但し、顧問は、組合を代表することはできない。」と顧問の規定を設けているが、顧問以外には業務執行等について助言等を求めることのできる役職の規定はない。
このほかに、任意に相談役、参与という名所の役職が置かれていることが少なくない。これは法律に規定されてはいないが、必要に応じて設けることは差し支えないものと考える。
顧問・相談役・参与をどのように区別するかについては、明確な基準はないが、顧問とは組合員以外の者であって、しかも組合事業遂行上、高い視点からの助言をなし得る者、相談役とは長年組合及び当該業界にあって、中心的役割を果たしてきた者であり、組合の運営及び当該業界の問題について豊富な知識と経験に基づいた適切な助言をなし得る者、参与とは長年組合事務所的側面から意見を述べ得る者、と考えてよい。
これらのことを勘案すると貴組合の前理事長は、顧問よりむしろ相談役に委嘱することの方がよろしいのではないかと考える。
なお、顧問・相談役・参与等の役職を設ける場合には、それぞれについて委嘱規定を置くなどして、それぞれの委嘱の期間等の基準を明確にしておくべきである。
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Q27 役員の選出母体等に関する質疑 | Q27-1 一法人から複数の役員を選出することについて
(1)理事のうち組合員たる一法人の役員から複数の理事を選任できるか?
(2)組合員たる一法人の役員から理事と監事を選任できるか?
(3)上記に質疑1,2が合法的な場合被選者1人を除き他は員外役員となるか否か?
(4)質疑2の合法的な場合でも、
1.一法人でも一組合員であるので一組合員から理事と監事が出ることは役員の兼職禁止に抵触するとの意見
2.役員の就任は自然人(個人)として就任するので同一法人から出ても兼職とならないとの意見
どちらが正しいか?
なお、当組合の実際例については組合員たる一法人の代表取締役を理事に、他の平取締役を監事に選任する状況にある。
(1)理事は、組合員たる一法人の役員から複数の理事を選任できる。
(2)組合員たる一法人の役員から理事と監事を選任できる。
(3)複数の組合役員を選任した場合複数の組合役員は員内である。
(4)(2)のとおりである。
すなわち、役員の就任は自然人として就任するので、同一法人から出ても兼職とはならない。 Q27-2 一法人からの役員数を制限することの可否
法人たる組合員より選出する役員数については、中協法に制限がないがこれを定款により一定の制限を加えることができるか?
制限が可能である場合は、それをどのように規定したらよいか?
組合員が法人である場合、その法人から選出される役員の数を一定数に制限することの可否については、法人組合員から選出される役員の数を一律平等に制限するのであれば差し支えないものと考える。
法人組合員から選出される役員の数を一定数内に制限した場合、実際の選挙について定数を超えて選出された者の取扱いをどうするかが問題となる場合があるので、この点定款に明確に規定しておく必要があると考える。
なお、定款への規定の仕方としては、次のような表現が適当であろう。
定款例第30条(役員の選挙)第3項の次に、次の一項を置く。
(4)前項の規定にかかわらず、投票の結果組合員たる一の法人から定款24条により定められた定数を超えて組合の役員が選出されることとなる場合は、同条に定められた定数の範囲内で上位得票者のみを当選人とする。 Q27-3 同一法人の他の役員と組合理事を交替すること
組合員たる法人の役員が、当該組合の理事に選任されていたところ、法人の経営する業務にたずさわる他の役員に理事を交替する必要が生じたが、何ら手続を経ずしてそのまま理事を交替することができるか?
理事の選任は、中協法第35条の規定により、必ず総会において選挙又は選任しなければならないから、それによらない理事の交替ということは、法律に違反する。理事というものは、組合員たる法人を代表しているのではなく、個人として、組合との委任契約により、公平な立場から組合の業務執行の決定に参画するのである。
従って、理事が、組合員たる同一法人の他の役員と交替するということは、理事本来の趣旨からいってもできないことである。 |
Q28 役員のリコール及び変更手続きについて | Q28-1 役員のリコールの手続き
現執行部は、組合活動に情熱がなく、運営についても不公平、不明朗な点が多いように感じおり、このままでは、組合の発展はおろか、最近の経済情勢から取り残されるのではないかと危惧される。
現役員の任期は2年余もあることから、この際役員改選の請求を起こしたいが、その手続きについてお教え頂きたい。
少数組合員の権利として、中小企業等協同組合法第42条では、役員の改選請求と手続きについて定めている。
まず、役員改選の請求をする者は、改選の理由を記載した書面に総組合員の5分の1以上を連署したものを理事に提出することになっている。そしてこの請求は、理事全員又は監事全員について同時にしなければならないが、法令又は定款、規約もしくは共済規定の違反を理由として改選を請求するときは、理事、監事それぞれ全員でなくても、その一部の者だけに対してでもよいことになっている。
この役員改選の請求があったときは、理事長は理事会に諮ったうえ、請求のあった日から20日以内に臨時総会を開催しなくてはならない。つまり改選の請求のあった日から10日以内に総会の招集の手続きをする必要がある。もしこの手続きがなされなかった場合には、法はその請求をした者が行政庁の承認を得て自ら総会招集の手続ができる旨を認めている。そしてこの臨時総会の場で役員改選の是非が問われるわけであるが、これは通常の議決と同様に出席者の過半数の同意があると役員は解任される。
ここで注意しなければならないのは、理事は改選請求に係る役員に対し、総会の日から7日前までに既出の改選の理由を記載した書面を送り、総会において弁明する機会を与えねばならない。これを怠ると罰則の規定が適用される。
もちろん役員改選の議案が否決されたときは当該役員は引き続きその職務を従来通り行える。これに不服がある場合、その旨を行政庁に申し出る別の途が開かれている(中小企業等協同組合法第104条)。 Q28-2 役員に係わる諸変更手続きについて
私どもの組合では、本年度の通常総会で役員が改選され、新役員が選任されました。(理事10名、監事2名。)
監事は前任者が再任されましたが、理事については、半数が新たに選任され、就任しました。 また、再任した理事のなかには住所を変更した者もおります。
役員が変更した場合、行政庁に役員変更届を提出することとなっていますが、その方法等についてご教示下さい。
役員に変更があった場合、中小企業等協同組合法第35条の2では「組合は、役員の氏名又は住所に変更があったときは、その変更の日から2週間以内に、行政庁にその旨を届け出なければならない。」とされております。
役員の変更とは、役員の氏名又は住所の変更があった場合、役員の改選又は補充があった場合、代表理事の交替、役付理事の交替、役員が死亡又は辞任をした場合など役員に関して変更があった場合の一切をいいます。
したがって、貴組合にあっても当然、役員の変更届を組合を所管する行政庁に提出しなければなりません。
変更の届出には、中小企業等協同組合法施行規則第3条(商工組合等にあっては、中小企業団体の組織に関する法律施行規則第1条の8)に規定されている様式による届出書に次の書類を添付して提出することとなります。
(1)変更した事項を記載した書面変更前と変更後の役員の氏名、住所、組合役員の役職、員内員外の別等を対照表にして記載。
(2)変更年月日及びその理由を記載した書面
例えば本質問においての変更理由例として「任期満了に伴う役員の改選が行われたため」「○○理由の住所移転のため」等と記載すればよいでしょう。
(3)役員の変更が役員の選挙又は選任によった場合は、総会又は総代会の議事録と理事会の議事録(謄本でよい)。
なお、役員の改選によって、全役員が再任した場合、あるいは、特定の役員の住所等の変更であっても、全役員の氏名、住所等を記載した(1)の書類は必要です。 |
Q29 理事会に関する質疑 | Q29-1 理事会召集期間の短縮について
本組合の現在の理事会の招集通知期間は、「会日の7日前」であるが、組合の実情によってこれを「会日の5日前」あるいは「会日の3日前」等に改めてよいか?
理事会の招集通知については、中協法第42条において商法第259条ノ2が準用されているが、同条但し書によって期間の短縮が認められているので、組合の場合も短縮することは差し支えない。
なお、短縮する期間については、組合の地区の広狭等によっても異なるが、少なくとも通知を受取ってから議案について研究する位の余裕のあることが適当と思われる。
また、書面議決を採用している場合は、郵便によって十分組合に到着する期間を加える必要がある。 Q29-2 理事会の定足数を定款で変更することについて
現行中協法第36条の3によると「理事会の議事は、理事の過半数が出席し、その過半数で決する」と規定されているが、本件を定款で「理事会の議事は理事の3分の2以上が出席し、その過半数で決する」と定め得るか?
又、上記のとおり定款に規定した場合、理事の過半数が出席し、その過半数で決した議事は有効と解釈されるか?
ご指摘の如く中協法で「理事会の議事は、理事の過半数が出席し、その過半数で決する」と規定しているが、定款で「理事会の議事は理事の3分の2以上が出席し、その過半数で決する」と加重規定しても差し支えないと解される。
過半数出席を規定した趣旨は、理事会の成立に理事全員の出席は望めないにしても、その性格上、少なくとも過半数の出席は必要である。しかも法は組合のあらゆる業種、業態に普遍的に適用されるものであるために、その必要最低限度である過半数出席を規定したものと解される。
このような趣旨から、ある特定の組合が、組合の運営に重大なる影響を与える理事会であるから、過半数出席で万全を期し難く、そこで3分の2以上の出席をもって慎重に事を運びたいとする場合、これを否定すべき積極的な理由は見出せない。
したがって、理事会の定足数を緩和することは当然できないが、これを加重することは甚だしい弊害が生じない限り差し支えないものと解される。
また、法で過半数とあるからと言って、定款で3分の2以上出席と規定した以上は、3分の2に満たない出席では理事会は成立しないと解する。 Q29-3 理事会の権限の一部委任について
理事会の権限の一部を、理事会の決議に基づいて他の機関(対策委員会)に委任できるか?
某組合では、退職金の支払及びその金額については、理事会で決議を行い、その支払方法、時期、金額の細部決定について、理事会が対策委員会に委任しているが、この場合対策委員会の決定事項の法的効果について(対策委員会は、理事長も含め理事4人、監事1人)。
総会(総代会)又は理事会に属することとされた権限は、それぞれの機関に専属するものであって、法に別段の定めのない限り、他の機関に委任することはできないものと解する。 Q29-4 代理人による理事会出席
組合の理事が理事会に出席できない時は、代理人を参加させることができるか?
組合の理事は個人的信頼に基づき選任され、かつ、組合と委任契約を締結した者であるから、その権利の行使及び義務の履行は、理事みずからの意思及び行為として行われるべきである。
また、中協法第36条の3第2項においては、組合が特に定款に定めた場合には書面によって理事会の決議に参加することができるとしていることの反対解釈から、理事は、代理人によって議決権を行使することはできないと解する。 Q29-5 理事会に欠席した理事の責任について
現理事で、理事会に出席するつもりだったが、急に出張等の都合で出席出来ず、また書面議決書も提出しなかった場合、理事会の決定事項については賛成したものとみなされるか、或いは全然無関係とみなされるか?
もし賛成したものとみなされるならば、反対の意思表示をしない限り出席しようが、欠席しようが同様であるとの解釈になるのではないか?
理事会に欠席した者は、決定事項について賛成したものとはみなされず、したがって、その決定の段階までは責任はない。
しかし、理事は、組合の業務について、監視の義務があり、理事会が開催されたこと、また当該決定がなされたことを知っていながら、決定から執行までの段階で、これを止むべき何らの措置をとらなかったときは、理事としての一般的任務懈怠の責任は免れ得ない。 |
Q30 議事録に関する質疑 | Q30-1 理事会議事録の記載事項
当組合では、退職金を支出すること及びその金額を理事会で決議した事実はあるが、議事録には組合の内部事情によってこの点を省略している。
この場合議事録に記載すべき事項を記載しなかったものとして中協法第115条に該当するものと考えられるが、どうか?
更にこの場合、実際上は、議決を行っているのであるから、当日の出席理事全員の同意により、議事録の補追を行うことができるか?
理事会において決議した事項を議事録に記載しなかったことが、故意又は重過失によるものであれば、貴見のとおり中協法第115条第5号の規定に抵触するものと解される。
また、議事録の補追については、出席理事全員の同意があればできるものと解する。 Q30-2 一部が承認押印しなかった理事会議事録の取扱
理事会議事録は出席理事全員の承認がなければ議事録として通用しないものかどうか? 不承認の理事(通常1/8~1/10名)からは承認捺印がなく議事録内容の調整修正が困難な場合の議事録の取扱いについてご見解をご教示賜りたい。
理事会の議事録については、中小企業等協同組合法第42条で商法第260条ノ4を準用しており、同条第2項によると「議事録ニハ議事ノ経過ノ要領及其ノ結果ヲ記載シ出席シタル理事之ニ署名スルコトヲ要ス」となっている。
このように理事会の議事録は、理事会議事の記録であって、出席理事の署名は、記録された内容が事実と相違ないことを証明するためのものであるから、出席理事の何人かが署名を拒否し、その署名捺印がないからといってその議事録が直ちに議事録としての意味を失うものではなく、当該議事録の内容が事実に反していない限り、理事会の議事の証拠となるものと解する。
したがって、出席理事は議事録が事実に反しない限り署名を拒否すべきものではなく、もし理由なく署名を拒否した場合には当然のことながら法律に定められた忠実義務違反となる。
なお、理由なく署名を拒否する理事がある場合は、不承認理事の署名のない議事録の作成をもって法律上の議事録作成義務は履行されたものと解する。 |
Q31 監査意見書に関する質疑 | Q31-1 決算関係書類の監査を監事が拒んだ場合の処理
決算関係書類の監査を監事が拒んだ場合、監査意見書なしで総会の承認を得ることは可能か?これについて、次のように解釈するが差し支えないか?
(解釈)
監事を改選のうえ、あらためて監査を行い意見書を付して承認を得るべきである。
貴見のとおりである。 Q31-2 決算関係書類に添付する監事の意見書について
通常総会で決算関係書類(事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、剰余金処分案又は損失処理案)の承認を求めるに際し、理事は監事の意見書を添えて総会に提出しなければならないことになっている。
監事に次のようなことがある場合、どのように処置したらよいか。
(1)監事が複数人いる場合、決算関係書類に添付する監査意見書の監事の意見は必ず一致しなければならないか。組合の決算書をみると、一通の意見書を監事が連名で出している例が多く見受けられる。
(2)監事全員が監査意見書の提出を拒んだ場合に、監事の意見書がないまま総会を開催し、決算関係書類の承認を受けることはできるか。また、監事の定数が1名の場合、その監事が病気等で、監査をしてもらえないときはどうか。
監事は、会計監査を通じて理事の業務執行を監督する立場にある機関である。監事には会計帳簿及び書類の閲覧、会計に関する報告徴収、組合の業務及び財産の状況を調査する権限が与えられており、それらの権限に基づいて、監事は各々が独立して監査業務全般を行う。
(1)複数の監事がいる場合、監査結果について監事すべての意見が常に一致するとは限らないし、その必要性もない。たとえ監事が複数存在するとしても、監事は合議機関ではなく、各監事はそれぞれが独立して監査業務全般を行うものだからである。
重要な部分について監事間に意見の相違がある場合に、その点を監査意見書で明らかにすることは、各監事の責任を明確にするばかりでなく、組合員に対して問題点について注意を促すという意味においても意義がある。
前述のように、監事は各々が独立して監査業務全般を行うから、監査意見書は、各監事が各別に作成すべきものである。
組合では通常、複数の監事が共同して監査を行い、連名で同一文言の監査意見書を作成することが多いと思われる。
しかし、法律的には、監事の合議によって一個の監査意見書が作成された訳ではなく、同一内容の複数の監査意見書が作成されたものと解される。各自の意見書の内容が同一であるので形式を連名にしたにすぎないのである。
(2)理事は、監事の意見書を添えて決算関係書類を通常総会に提出しなければならない。しかし、監事が意見書の提出を拒んだ場合は、これを強制的に履行させる方法はない。また、監事の監査がない状態で決算関係書類を承認する総会の決議がなされた場合は、その決議は取消原因を有することになるものと解される。
監事全員が意見書の提出を拒んだ場合は、煩項でも、監事を解任し、新たな監事を選んだうえで、新しい監事の監査を経て再度総会を開催しなければならない。監査意見書の提出を拒む監事の行為は、法令・定款違反(任務懈怠)に当たる。
監事の定数が1人であり、その監事が病気等で執務不能になった場合は、監査を行うものが1人もいなくなる。他に監査を行う監事が必要になるが、定款に定める監事の定数の欠員ではないので、そのままの状態で新たに監事を選任することもできない。この場合はその監事に辞任してもらうか、辞任に応じてもらえなければ解任の手続きをとって退任させ、総会を開いて新たに監事を選任して、後任の監事の監査を待って改めて通常総会を開くほかはない。 |
Q32 総会(総代会)の召集に関する質疑 | Q32-1 総会の延期・続行手続きについて
総会に会日中に、何らかの理由により議事を終了できないときは、他の日に延期または続行することができるということを聞いた。 総会の延期と続行とはどのように違うのか。
また、次のような手続きに問題はないか。
(1)議事の進行状況からみて、会日中に議事を終了しないことが明らかな場合、議場に諮らず、議長単独の判断で総会続行の決定をすることができるか。
(2)総会の席上では、会場確保等の関係から後日の総会の日時や場所を決定することが難しいと思われる。日時、場所の決定を議長に一任し、決定し次第速やかに組合員に連絡することとしても問題はないか。
(3)延期または続行する総会の開催日時を、場所の確保等の理由から、当初の総会日から1ヵ月程度先の日に定めても構わないでしょうか。
総会においては延期または続行の議決をすることができ、その場合改めて総会招集の手続きは要しないとされている(組合法第54条(商法第243条準用))。
ここにいう延期とは、総会の成立後、議事に入らず、会日を後日に変更することをいい、続行とは、議事に入った後、時間の不足その他の事由により審議未了のまま総会を中断し、残りの議事を後日に継続することをいう。この延期または続行の議決に基づき後日開かれる総会は通常、継続会といわれている。
このような制度が設けれれているのは、何らかの都合により総会を延期または続行しなければならなくなった場合、総会の招集手続きを繰り返さなければならないという煩わしさが生じ、また、招集手続に必要な10日間は総会を開くことができず、予定の審議も速やかに終了することができないという不都合が生じることを避けるためです。
(1)総会の延期または続行は総会の議決を要件としているから、総会の議決を経ず、議長の判断のみで延期または続行を決定することはできない。ただし、この議決は議案そのものに関する議決ではなく、一種の議事進行に関する決議ですから、あらかじめ招集通知に議題として記載されている必要がないことは当然である。
(2)継続会と当初の総会とは同一性を有していなければならない。そのためには、総会の延期または続行の議決において、原則として、後日の継続会の日時及び場所を定めることが必要で、期日を定めず、単に総会を後日に延ばすときには、総会は同一性を保ちえず、改めて招集通知が必要になるとされている。
しかし、実際上会場の都合などで、総会の席上では具体的に決定し得ない場合も有り得る。その場合、総会が日時、場所の決定を議長に一任し、総会終了後速やかに通知せしめることを議決した時には、総会において日時、場所を定めたものとして有効な延期または続行の議決がなされたものと解することができる。
なお、この場合議長の通知は、延期または続行の趣旨からして、当初の総会出席組合員(書面、代理を含む)に対してすれば足りると解されている。
(3)この制度が設けられた趣旨からして、継続会は当初の総会の会日から相当の期間内に開かれることを要する。なぜなら、相当の期間経過後であれば、総会招集の手続をすることが十分可能であるからである。このような解釈から、相当の期間内というのは、総会招集通知に必要な10日間以内と解するのが妥当とされている。1カ月も先の日時に開催することは、明らかに継続会とはいえず、改めて総会招集の手続が必要になると考えられる。 Q32-2 役員任期満了後の総会召集方法について
理事の任期満了後の総会招集は、どのように行ったらよいか?(特に問題となるのは、理事改選の総会招集についてである。)
前理事任期満了後における総会招集は、中協法第42条により役員について商法第258条第1項(欠員の場合の処置)が準用され、退任等により役員の員数が欠ける場合は、前役員(任期満了又は辞任による退任に限る)は新たに選任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有するから、前理事が行うこととなる。 Q32-3 総会の招集請求方法について
中協法第47条第2項の規定に基づき総組合員の5分の1以上の同意を得て、総会招集の請求を理事会に提出したところ、その後組合員が増加し、5分の1を満たさなくなったが、5分の1の要件は、理事会に請求した時点によって判断すべきか、それともその後の増員数を考慮すべきか?
なお、理事会への請求時点でよいとすれば、臨時総会の招集通知は理事会請求当時の組合員のみ発すればよいか?
中協法第47条第2項の規定に基づき、組合員が組合員総数の5分の1以上の同意を得て臨時総会の招集を請求する場合には、その請求の日における組合員総数の5分の1以上の同意があれば有効とされ、その後、組合員が増加しても当該請求は適法になされたものと解する。
なお、総会招集の通知については招集通知を発送する時点における組合員のすべてについて行う必要がある。 Q32-4 総会召集請求の要件について
総組合員の5分の1以上の者が、各人毎に同一書式による総会招集要請書を代表理事宛提出してきた。
これには、(1)組合の今後の運営方針を組合員外の特定の者に委任する件、(2)役員改選の件が記載されている。
この場合に、
1.会議の目的たる事項は示されているが、中協法第47条第2項の招集理由書、同第41条第3項による改選の理由書がないので却下して差し支えないか?
2.組合の業務執行のすべてを員外者に委任することは、法第38条の2の建前よりしていかがか?
当該請求は、貴見のとおり招集の理由あるいは改選の理由が不十分であり、これを却下して差し支えないと考える。
なお、総会招集の請求は、組合員が他の組合員の同意を得て行うこととなっているので、同一書式により各人毎の同意を得ることは差し支えないが、各人毎に直接組合に請求することは適当でない。
また、業務執行のすべてを員外者に委託することについては、当該員外者が代表理事であれば差し支えないと考える(中協法第35条第4項及び同法42条において準用する商法第78条)。
ただし、これは、あくまで業務執行の実行の段階でのものであり、組合の運営方針あるいは事業計画の決定等は理事会あるいは総会の権限であって、このような事項を員外者に委託することは中協法違反となり、また、当然総会招集請求却下の理由となる。 |
Q33 総会(総代会)の議長に関する質疑 | Q33-1 総会の議長を複数制にすることについて
(1)総会の議長は、必ず1人でなければならないか、その理由は?
(1)総会の議長については、中協法に必ず1人でなければならないという規定はないので、実施組合は皆無と思うが、複数制をとっても法律違反にはならないと解する。
(2)複数でもよいとすれば、実際問題としてその運用を如何にすべきか?
(2)議長は、会議体としての総会を代表し、その議事を主宰する職務を有するものであるから、これを複数にすることは議長団内部の意思統一や調整が必要となり、実際問題としてその統一が困難となる場合も考えられ、議事の円滑な進行を阻害することともなりかねないので、1人であることが望まれる。
特殊の事情等により複数制をとらざるを得ない場合には、できるだけ数を少なくするとともに、議長間で合議制をとるようにすることが必要であり、また、議長間で職務の分担が可能な場合はそれを明確に規定するとか、可否同数の場合の決定権の行使を考慮し議長の意思統一が円滑でないと予想されるときはこれを奇数とすることなども考慮すべきであろう。 Q33-2 議長の委任状行使について
事業協同組合の総会の議長は、委任状を受けられるか?
中協法第52条第3項の規定により議長は議決権を有しない。
したがって、委任状による議決権の行使はできない。 |
Q34 総代及び総代会に関する質疑 | Q34-1 組合員数が201名を割った場合の総代会の存続
設立当初から組合員数が200人を越えてたため、総代会制を採用してきたが、経済情勢の変化等諸要因により、組合員企業の転・廃業が相次ぎ、現在組合員数は200名となり、総代会の存続要件(200超)を欠いてしまいました。
今後もさらに、組合員の脱退があることが予想されることから、新規加入者の勧奨努力は行っているものの、当分の間は存続要件を満たすことは難しい状況となっている。
このように、組合員数が200名以下に減少した場合、定款は総代会のままとなっていますが、総会と総代会のどちらを開催すればよいか。
総代会に関しては、中小企業等協同組合法第55条(中小企業団体の組織に関する法律では第47条。)に規定されているが、企業組合、協業組合を除く組合は、組合員数が200人を超える場合には、定款の定めるところにより、総会に代わるべき総代会を設けることができることになっている。
貴組合では、既に組合員数が200人となっており、総代会の存続要件(200名超)を欠いているので、総代会は設置しえない状態にある。
これは、たとえ定款により総代会を設けていても、組合員が減少し、法定数に達しなくなったときは、総代会は当然に機関としての機能を失うこととなるからである。
したがって、現行の定款が総代会規定のままになっていても、現在の状態が続く限り、議案審議は総会で行うこととなる。
そのため、現在、組合の実態と定款とが一致していないわけであるから、総代会制廃止にかかわる定款変更を行うか、あるいは、速やかに組合員を増加して存続要件を満たすことが必要となる。 |
Q35 委任状に関する質疑 | Q35-1 総会に於ける白紙委任状の取扱について
今年もまた、総会のシーズンがやってきましたが、総会における白紙委任状について、次の点をご教示下さい。
(1)白紙委任状は、総会に出席しない組合員が理事長又は総会の議長に議決権の行使を一任したものとして、数に制限なく、これを理事長又は議長の議決権行使の数に加えることができるか。
(2)理事長又は議長の代理権行使の数が制限されるとすれば、理事長又は議長は、他の理事又は他の組合員に委任状行使を依頼することができるか。
(3)白紙委任状は、そのままでは無効であり、必ず代理人の氏名が記入されていることが必要であるならば、いつまでに代理人を決め、有効なものにしておくべきか。
(4)代理人の代理できる数以上に委任状がある場合は、どう処理すればよいか。
白紙委任状と呼ばれるものは、組合が組合員に対して総会招集の通知とともに議決権代理行使の委任状用紙を送付し、その代理権の授与を勧誘するものであり、通常は、総会に出席しない組合員が議決権を行使すべき代理人を特定しないで白紙にして組合に送るものです。このように、白紙委任状は、委任状作成者(委任者)が受任者となる人を特定せずに、記載の一定事務の処理及びこれに要する代理権授与の申込みをし、これの取得者が白紙の部分に受任者として自己の名を記入することによって両者間に契約が成立し、受任者としての権利義務と代理権を取得するものです。
(1)白紙委任状は、総会の開催、議案の提出、議決権の確認その他総会に関して全般の責任をもつ理事長に代理人の選任を一任したものであって、理事長又は議長に議決権の行使を一任したものではないと解されますので、これを理事長がすべて行使することは許されません。理事長が組合員の代理権を行使できるのは、組合員である場合に限られますが、一般の組合員と同様に4人までに制限されます。
なお、議長については、そもそも総会の議決に加わる権利を有しませんから、権利のない者に議決権の行使を委任することはありえないことですし、また、議長は総会において選任されますが、議決権数(総会の定足数)の確認の必要上、その選任前に代理人が指定されていなければなりませんので、議長が代理人の選定をすることはありえないものと解されます。
(2)このように、白紙委任状は、中小企業等協同組合法第11条第2項後段及びこれに基づいて定款で規定した代理人となりうる者の範囲内において、理事長に代理権を行使すべき者の選定を一任したものと解されますから、理事長が組合員の中から受任者を選定し、その組合員に代理権の行使を委任することは問題ありません。
ただし、他の理事に委任しようとする場合は、その理事が組合員であることを要します。
(3)白紙委任状は、白紙の箇所が補完されて初めて委任状としての効力を発するものですから、総会において行使される際には、代理権を行使する者の氏名が記入されていなければなりません。この代理人の決定は、議決権行使の時(厳密に言えば、議決権数(総会の定足数)の確認時)までになされれば有効であると考えます。
(4)代理人の代理できる数を超える部分の委任状は無効となり、したがって、出席者数にも算入されないものと解されます。 Q35-2 委任状による代理制限について
(1)中小企業等協同組合における総会の場合の委任状は、出席者1人につき2人迄の委任を受けることができるとし、それ以上の委任を受けることができないという規定ができるのか?
(1)中協法第11条第4項で定められているように代理人が代理し得る組合員の数は4人までとなっているが、同条第2項では、「定款の定めるところにより」代理人に議決権又は選挙権を行使させるべき旨が定められているので、右に述べた4人までの制限をさらに定款で縮小することができるものと解される。したがって、貴組合の定款で代理人が代理し得る組合員の数を2人までとする旨を規定すれば、これに従わなければならない。
(2)総会に出席しない組合員が被委任者の氏名を記入せず、組合又は、理事長宛の提出の委任状は数に制限なく理事長、又は総会の議長に一任されたものとして、議決権行使の数に加えることができるか?
(2)代理人の氏名が記載されていない、いわゆる白紙委任状は理事長に代理人の選定を依頼したものであって理事長又は議長に議決権の行使を一任したものではないと解されるから、設問のごとく理事長又は議長がこれを適当に議決権の数に算入することは許されないし、またこれが総会において行使される際には、代理人の氏名が記入されていなければ代理権を証する書面としての効力がないことになる。
(3)委任状もQ(1)同様2人迄しか代理出来ないとすれば他の委任状を如何に処理すべきか?
(3)上記(1)に述べた数を超える部分の委任状は無効となる。
(4)(3)の場合、理事長又は議長は、他の理事又は他の組合員に委任権行使を依頼することができるか?
(4)上記(2)に述べた白紙委任状の場合、これを中協法第11条第2項後段及びこれに基づいて定款で規定した代理人となり得る者の範囲内において理事長に代理権を行使すべき者の選定を一任したものと解してよい。
したがって、他の組合員に委任する場合は問題ないが、他の理事に委任しようとする場合は、その理事が組合員でなければならないことになる。
なお、議長は総会において選任される者であるから、その選任前に代理人が指定されていなければならないので、議長が代理人の選定をすることはあり得ないものと解する。
(5)以上の外委任状に対する効力上如何なる制限があるか?
(5)とくにない。 |
Q36 役員選挙に関する質疑 | Q36-1 立候補届出期間等について
事業協同組合定款例第30条第5項(立候補制、推薦制をとる組合の役員選挙総会公告期間20日前)と同条第6項(当該組合の立候補者、推薦者の届出期間15日前)とは、日数において反対の性質のものではないか?
総会会日の公告日と立候補の届出期間との関係については、先ず総会の協議事項、開催月日を明示して公告をなし、その総会会日に役員選挙を行う旨の公告内容の一項目として立候補期間を定めるものであり、おたずねのように反対の性質のものではないと思料する。 Q36-2 役員候補者推薦人を理事会に限ることについて
役員選挙に推薦制をとる組合が、候補者の推薦人を理事会のみに限定することはできるか?
推薦人を理事会のみに限定することは、汎く人材を得る見地から、また他の組合員も等しく選挙し、選挙される権利をもっている点からみても不適当と思料する。 Q36-3 役員定数を超過した投票の効力について
連記式投票をとる組合の役員選挙に際して、投票すべき役員数を超過して記載された投票(例、役員定数10人のところ12人記載)、あるいは投票すべき員数に達しなく記載された投票の有効、無効について回答されたい。
なお、本組合には、定款には連記式投票制は明記してあるが、連記すべき数の規定がなく、また規約等にもそれがない。
選挙すべき役員数を超過した投票は、全部(記載された被選挙人員、設例では12人)無効である。
また、選挙すべき役員数に達しない投票については有効である。 Q36-4 次点者の繰り上げ当選について
総会において、理事の選挙を行い、総会終了後、理事当選者に対し、就任方を依頼したが、就任を辞退した者があり、この場合次点者を繰上げて理事当選者にすべきか?又は新たに選挙をしなおすべきか?
総会において選挙を行い、当選した理事が就任を辞退したときは定款又は役員選挙規約等により次点者繰上げの定めのあるとき以外は、定数を欠く員数分の理事について新たに選挙し、補充すべきであると考える。 Q36-5 氏名推薦に於ける選考委員の資格について
指名推選制の選考委員は、組合員でなければならないか?又は、員外役員あるいはその他の非組合員でも差支えないか?
選考委員は、組合の性格からして組合員のなかから選ぶのが適当と考えるが、組合員以外から選任しても違法ではないので、特別の事情があるときは組合員以外より選ぶことも止むを得ないであろう。 Q36-6 地区別、部会別等による役員選挙の是非
総会の席上において、業種などによる部会別あるいは地区別に役員を選挙することは適法か?
中協法第35条第3項により、役員の選挙は「総会において選挙する」となっており、地区別あるいは部会別の選挙は総会における選挙とはならない。
また、この場合の総会とは、総会の開催されている会場のみを意味する のではなく、総会という機関そのものを意味していると解すべきであるか ら、設問の選挙が総会の席上であっても、部会別等による選挙は、部会別 等に投票所を設けて行う選挙と実質的にかわりなく、総会という機関にお いて行われたこととはならないので適法とみることはできない。 Q36-7 ○×式による役員選挙方法の是非
投票用紙に予め候補者全員の氏名を連記の上配布し、○×によって投票を行うことの可否。
差し支えない。 Q36-8 任期満了前の役員選挙について
事業協同組合において、任期満了前に役員の改選を行う場合に次の点をご教示願いたい。
(1)任期満了前に改選のための役員選挙を行うことは問題があるか?
(2)前項に問題がないとすれば、その選挙の期日は任期満了前の何日以内とすべきか?
(1)新たに選出された役員は、前役員が辞任しない限り、前役員の任期が満了するまで役員に就任せず、任期満了の翌日に初めて就任することになるわけであるから、前任者の任期満了前に新役員を選出しておくことは何ら差支えない。
(2)任期満了前の何日以内に開催しなければならないかということについては、定説がないので任期満了日に近い期間に行うのが適当である。
その期間は、任期満了日に近い期間内で組合の実情を勘案して決定し、規約などに定めておくことも一案である。
なお、農協においては、「任期満了日の60日前から7日前までの間」となっているので参考までにつけ加えておく。 Q36-9 役員専任制の運用
当組合は、役員の選出を「選任制」の方法で行うこととしておりますが、次の点についてご教示ください。
(1)推薦会議への推薦委員の委任状(代理)出席は、可能ですか。また、書面による出席はどうですか。
(2)推薦会議で決定した役員候補者を理事会で修正または拒否することができますか。
組合役員の選出方法には、大きく分けて、「選挙」による方法(例外として、指名推選の方法を含む。以下「選挙制」という)と、「選任」による方法(以下「選任制」という)の2つの方法があります。「選任制」は、役員を総会の議決(多数決)によって選出するもので、あらかじめ一定の手続により選定した役員候補者を、一つの議案として総会に提出し、これに対する賛否を問う方法です。選任制は、選挙制を採ることが総会運営上問題を生じがちな、組合員数の多い大規模の組合で採用する場合に意味のある制度ですが、概ね次の手順に従って行うよう指導されています(昭和55年9月2日付55企庁第1324号中小企業庁指導部長通達「中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律の施行に伴う運用について」参照)。
(1)推薦委員の選出(2)推薦会議の招集(3)推薦会議の開催・役員候補者の決定(4)役員候補者の承諾(5)役員候補者を理事長に推薦(6)理事会の開催(役員選任に関する議案の決定)(7)総会開催通知(役員候補者名簿の送付)(8) 総会(役員の選任)
それでは、ご質問について考えてみましょう。
(1)推薦委員は、その人格に重きをおいて、地域、業種、規模等から組合員によって選出され、役員候補者の決定を委任されたものです。このような推薦委員の性格上、その職務行為を他人に委任することはできません。また、推薦会議への書面による出席についても、推薦委員の職務は、役員候補者を選定するという、いわば原案そのものの作成に参画するということにあるわけですから、あくまでも推薦会議に実際に出席するのでなければその職務は果たしえず、したがって、書面による出席も認められておりません。
(2)選任制においては、役員候補者の選定は、理事会が行うのではなく、地域、業種、規模等各組合の実態に即して定められた選出母体ごとに組合員の中から選ばれた、推薦委員をもって構成する推薦会議において行うことになっており、理事会は、推薦会議において選定されたところにしたがって役員候補者名簿を作成し、総会提出議案として決定することになっています。
これは、選任制が選挙制に比べて、組合の民主的運営という点においてやや欠ける面があり、その運用を誤ると組合運営がボス的支配に陥る危険性もあることから、役員候補者の選定に組合員の意向を反映できるよう配慮したものです。
このようなことから、推薦会議で決定した原案を理事会において修正したり、拒否したりすることができることになると、実質的に理事会が役員候補者を決定することになり、推薦会議まで設けて民主制を担保しようとした趣旨が失われることになります。したがって、推薦会議で決定した役員候補者を理事会において修正または拒否することは許されません。 Q36-10 当選人が理事就任を辞退した場合の効力
当組合では、先に開催した通常総会において、指名推選の方法により役員選挙を行ったが、総会終了後、当選理事18人のうち4人が理事就任を辞退した。当組合の理事定数は、定款により「15人以上18人以内」となっているので、この4人の就任辞退者が出た結果、理事就任者が理事定数の下限を下回ることになってしまった。指名推選の方法をとる場合は被指名人を区分して行ってはならないと聞いたが、当組合の場合は、再度理事全員について選挙しなおすべきであろうか。または、辞退した4人分についてのみ選挙すればよいのか。
指名推選制は、役員選挙について、最も民主的であるべき無記名投票制 の例外として設けられている制度であるから、その方法の実施に際しては、法律上、(1)総会の出席者中に異議がない場合に限り、この方法の採用が認められること(中小企業等協同組合法第35条第9項)、(2)当選人の決定について、出席者全員の同意を必要とすること(同条第10項)、(3)2人以上の理事又は監事を選挙する場合において、被指名人を区分してこの方法を用いてはならないこと(同条第11項)、この3つの厳しい要件が課されている。
法がこのような要件を課しているのは、多数派が少数派を排除することによって理事又は監事の構成が多数派に偏することを防止するためである。
質問は、指名推選の方法により理事の定数の全員を選挙したにもかかわらず、その後一部当選人の就任辞退により、理事数に不足が生じたため、再度役員選挙を行う場合において、先の役員選挙における当選人の当選を有効なものと認めてよいかというものである。
これには2つの見解があり、1つは、そもそもこのような理事数の不足は、定数の全員が選挙され、当選人が確定した後に生じたものであるから、当選人の当選は有効であるとする見解である。ちなみに、投票によって選挙された場合におけるこのようなケースについては、この考え方により、当選人の当選は有効であると解されており、したがって理事数の不足分については、繰上当選の定めがあれば次点者を当選人とし、繰上当選の定めがないときは、就任辞退による不足数につき再度選挙すればよいこととされている。
いま1つの見解は、指名推選制が、前述のように、投票による選挙方法の例外として設けられ、その実施に際しては特に厳しい要件が課せられている点を重視し、就任辞退者分のみの選挙は、多数派による少数派の排除の防止を目的とする法の趣旨に反する結果を招く恐れがあるとして、指名推選の方法をとる場合においては、当選人の当選を無効とし、改めて全員について選挙しなおすべきであるとするものである。
しかし、質問のようなケースにおいては、前者の見解のように、当選人の当選は有効であると解すべきであり、また、指名推選制に課された要件の中の「被指名人を区分してこの方法を用いてはならない」とする規定については、あくまで1つの選挙行為について指名推選の区分適用を禁止する趣旨のものであって、選挙行為が終了した後に、既に就任を承諾した当選人の当選を無効とし、再度全員について選挙しなおすことまでも求める趣旨のものではないと解される。
したがって、貴組合の場合は、就任辞任により不足が生じた4人の理事を補充するための選挙を行うことになる。 Q36-11 1人1票制の場合の累積投票等について(協業組合)
役員の選挙権を1組合員1票とする協業組合では、理事の選挙に累積投票を採用できないか。
また、累積投票を監事の選挙に採用できないか。
累積投票とは、協業組合で理事を2人以上選任するときに、各組合員に1選挙権につき選挙される理事の数と同数の選挙権(3人の理事を選出する選挙のときは、1選挙権につき3票)を与え、各組合員がその選挙権を1人に集中して投票しても、また数人に適宜に分散して投票することもその自由にまかせ、その結果得票数の多い者から順次所定の員数までのものを当選者とする制度をいう。このように累積投票制は1人の組合員が複数の投票を行うことになるので、役員の選挙について1人1票制をとる協業組合では累積投票制を採用することはできないと解されている。
次に監事の選挙についても累積投票制を採用できないかとのご質問であるが、監事の選挙については累積投票を採用することはできない。累積投票は、理事(株式会社では取締役)の選挙についてのみ採用できる選挙の方法である。累積投票は、少数派の組合員にもその有する選挙権数に比例して理事を選出する機会を与えるために採用された制度で少数派の保護を目的としている。
監事は、組合の会計に不正や誤りがあるかどうかを監督することを職務とする機関で、公正、中立でなければならない。
少数派組合員の保護を目的とする累積投票は監事の選挙にはなじまない選挙方法であるわけである。 |
Q37 定款変更議決後の役員選挙等に関する質疑 | Q37-1 認可を受けない変更定款による役員選挙の効力
役員の選挙に、指名推選の方法を取り入れるように総会において定款変更の議決をして、その直後に指名推選の方法により役員の選挙を行い、しかもこの指名推選の方法により選ばれた役員は、定款の変更につき行政庁の認可があった日に就任するものであることを同総会において確認した。 このような役員の改選は適法であるか否か?
定款の変更について行政庁の認可があった日に就任する旨の停止条件が付された役員の改選であるから、適法であると解する。 Q37-2 増員分役員の就任、就任日について
総会において役員の定数の変更を議決すると同時に、定款の変更に伴う行政庁の認可をまたずして、同日直ちに議決された新しい定数によるところの役員の選挙を行い、その状況を記入した議事録を添付した役員定数の変更の定款変更認可申請書を行政庁に提出してきた場合、どのような指導をすべきか?
設問のごとく、役員の定数の増加につき定款の変更を議決した総会において、行政庁の認可をまたず、ただちに増員分の役員を含めた役員の全員の選挙を行おうとする場合は、次の方法によれば有効と解される。
1.定款変更前の定数による役員の選挙と増員分の役員の選挙とを区別して行うこととし、定款変更前の定数による部分の役員は、ただちに就任し、増員分の役員は選挙の際に定款の変更につき行政庁の認可を受けた日から就任する旨の停止条件を付しておき(停止条件を付した旨は議事録に明確に記載することを要する)、その条件が満たされた日、すなわち行政庁の認可のあった日に就任する。
2.定款変更による増員分を含めた全役員の選挙を一括して行うこととし、その際に役員の全員につき1に述べたような停止条件を付し、その条件が満たされた日に就任する。 Q37-3 定数に満たない役員選挙等について
定款上理事の定数が「18名以上20名以内」と定められている組合において無記名投票により役員の選挙を行ったが、15名しか選出されなかった。この場合どのような処理を行うべきか?
選ばれた15名は役員として有効である。ただし、定数に満たないから、残りの人数について、当該総会において、総会の続会の議決を行っておき、後日選挙を再度行うか、新たに総会を開催して、残りの3名分について選挙をやり直す必要がある。この場合、不足分を選ぶ総会は可及的すみやかに開催される必要がある。
なお、このまま残りの役員の選出を行わないで、いつまでも15人のままでいることは定款違反となるので、行政庁における業務改善命令の対象となり得る。また、役員候補者が定数に満たないような組合においては、定款改正を行い、実情にあった定数にする必要があろう。 Q37-4 定款に定めのない方法による役員選挙の是非
当組合では、このたびの通常総会において、任期満了による役員改選を行うことになっているが、次の点について疑義がありますのでご教示願いたい。
なお、当組合の定款では、役員の選出方法は、無記名投票制又は指名推選制となっている。
総会当日に組合員の一部が指名推選制に反対することが予想されることから、このたびの役員改選に限り、立候補制により役員を選挙したいと考えているが、現行定款のまま行って差し支えないか。
役員の選出方法については、中小企業等協同組合法(以下「組合法」という。)第35条に定められているが、組合の役員は、総会(総代会)において選出することになっており、役員の選出方法には、大別して「選挙」と「選任」の2つの方法がある。
「選挙」は、1組合員1票の「無記名投票」をもって行うことを原則としているが、総会の出席者全員に異議のない場合は、例外として「指名推選」の方法によって行うことが認められている。貴組合の役員選出方法は、これに該当する。
定款に定めのない方法による役員選挙の是非については、中協法では、役員選挙は「定款の定めるところにより」行わなければならないこととされており(第35条第3項)、このため、第33条において、役員選挙に関する規定を定款の絶対的必要記載事項と定め、選挙の有効、無効に係る基本的手続ないし方法について定款への記載を義務づけている。
したがって、無記名投票制、指名推選制、立候補制のいずれの方法を採る場合であっても、あらかじめその旨の規定を定款に定めておくことが要件となり、よって、定款に定めのない方法による役員選挙はできないと解される。 |
Q38 定款変更に関する質疑 | Q38-1 定款変更の効力発生時期について
中協法第51条第2項において「定款の変更は、行政庁の認可を受けなければその効力を生じない」と規定されているが、変更した場合、その効力の発生時期は、認可をしたときであるか、あるいは組合が変更議決をしたときに遡及するか?
ここに問題
定款変更の効力は、行政庁が認可をしたときに発生し、組合が定款変更を議決したときに遡及しないものと解する。
なお、効力発生時期をさらに厳密にいえば、定款変更の認可は、行政処分であるから、行政庁において決裁を終った日又は認可書を作成した日にその効力が発生するのではなく、認可があったことを組合が知り得たとき、すなわち認可書が組合に到着したときから効力が発生することとなる。 Q38-2 法令の改廃による定款変更手続き
(1)法令の改廃により既存の定款の規定が当然に変更される場合の定款変更は、変更される定款の規定は法律上無効であるから、総会の議決を経ないでこれを変更することができるか?
(2)事務所の所在地が、行政区画の変更により変更する場合等定款規定の中で事実に基礎を有するものは、その事実の変更により定款を変更する場合には、上述の理由により、総会の議決を必要としないか?
法令の改廃による定款変更であっても総会の議決並びに行政庁の認可は必要であり、行政区画の変更等に伴う定款変更についても同様と解する。 Q38-3 地区を表していない組合名称の是非
管下○○工業用冊子工業協同組合より、その名称を「日本冊子工業協同組合」と改めたい旨変更理由書とともに定款変更認可申請書の提出があったが、この組合は ○○府をその地区としており、前記のごとく「○○組合」を「日本○○組合」と改める点に関しては、組合の実態を現わす上において不適当と考えられる。しかし、この申請を不認可とするには格別の法的根拠もないようなので、それに対するご見解をお示し願いたい。
設問については、中協法上は、これを禁止する根拠はないが、組合指導の面からすれば、貴見のごとく、○○府の区域を地区とする組合が全国を地区とする組合であると一般通念上誤認されるような名称を使用すること自体、好ましいことではなく、また関西方面にはブラシ業者をもって組織する組合が他にも設立されていると考えられるので、これとの均衡を考慮し、でき得れば組合の実態にふさわしい名称を使用するようにするのが適当と考える。 Q38-4 地区を拡大するための定款変更の認可行政庁
○○県を地区とする事業協同組合が、事業拡張を図るため、地区を数県に拡大することの定款変更を総会で議決した。
この場合、この定款変更の認可の所管行政庁は何処?
この場合における定款変更の認可の所管行政庁は、当該定款の変更の効力が発生した後に所管することとなる行政庁である。 Q38-5 組合員資格の定款記載方法について
定款上組合員資格を明らかにするため「注」として詳細説明文を条文末尾に記入するのは正しいか?説明文を条文中に挿入すべきかどうか?
定款上組合員資格を記載するに当たっては、「注」として条文の末尾に詳細に説明文を書くことは望ましくなく、本文中に具体的に、かつ明確に記載するようにされたい。 |
Q39 出資一口の金額の減少に関する質疑 | Q39-1 出資一口の金額の減少について(その1)
組合員の加入を容易にするため、従来出資1口の金額5万円を1万円に変更し、既加入組合員の出資1口を5口に変更する場合は、組合財産に実質的減少をきたさず、したがって債権者の利益を害するおそれもないと思われるが、この場合も中協法第56条の手続を必要とするか?
出資1口の金額の減少には、一般的に、次の二つの場合がある。すなわち、事業の縮小等により予定出資額を必要としなくなった場合の減少及び欠損を生じた場合における出資額と純財産額とを一致させるための減少である。
したがって、おたずねの件のような場合は、実質的な出資1口の金額の減少ではないが、形式的には出資1口の金額の減少と解すべきであるから、中協法第56条及び第57条に規定する手続をとらなければならないものと解する。 Q39-2 出資一口の金額の減少について(その2)
ある事業協同組合において、その組合員の引き受けた出資の払込みがすでに全額完済しているのであるが、更に出資の増額をはかって組合事業の拡充強化を行うとし、現行の定款の規定では出資1口の金額が10,000円であり、その払込みも1口につき2回払いの5,000円であるが、これでは今後の増資を引き受けかねる組合員が大部分であるので、払込方法を緩和しようとして次のとおり定款を変更しようとしている。
なお、(2)の場合は1口の金額が2分の1になるが、その口数は2倍になるので現在の出資総額には減少をきたさない。
(1)1口の金額は現行のまま10,000円で、その払込方法を1口につき2,500円(現行の2回払を4回払込)にする。
(2)1口の金額を現行10,000円から5,000円に減少し、第1回の払込を1口につき2,500円にする、という方法で何れも条文の中に但し書で増資分につき適用するということを明記しようとするものである。
以上の場合において、(1)又は(2)の方法で定款変更認可申請をして、認可されるかどうか?
おたずねの件については、(1)及び(2)のいずれの場合であっても認可 されることができるものと解する。
なお、(1)の場合は単に出資の払い込み方法の変更であるからとくに問 題はないが、(2)の場合は、出資1口の金額の減少であるので中協法第56条及び第57条の規定による債権者保護手続をとることが必要であり、またその手続を終了したことを証する書面を定款変更認可申請書に添付しなければならない(中協法施行規則第5条第3項)から注意が必要であ る。 |
Q40 組合事業と組合員資格事業に関する質疑 | Q40-1 定款記載事業を実施しない場合の処理について
定款に第7条本組合は第1条の目的を達成するため次の事業を行う。
1.組合員の取扱品の共同購買、共同保管及び共同配送
2.組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む)及び組合員のためにするその借入
3.○○金庫、××銀行その他組合員の取引金融機関に対する組合員の債務の保証
第41条総会においては、法又はこの定款で定めるもののほか、次の事項を議決する。
1.借入金額の最高限度
2.一組合員に対する貸付け(手形の割引を含む)又は一組合員のためにする債務保証の残高の最高限度と規定している協同組合が、
(1)定款第7条第2号及び第3号の事業は当分の間実施しないこととして総会に対し定款第41条第2号の決議の審議を求めず、総会に出席した組合員もこれに関する決議を要求しなかったために、総会がこれに関する一切の決議をせずに終了したときには、理事は職務過怠の責を負うべきか?
(2)定款に記載してある事業を一定期間実施しないときは、必ず総会にはかり定款の一部を改正して、その該当事項は削除しなければならないか?
(1)ある事業年度において組合が行おうとする事業については、事業計画書及び収支予算書に記載され、総会の議決を経なければならないことになっている(中協法第51条第1項第3号)ので、この議決を経ていない事業は、定款に記載されていても、当該事業年度においては、実施しないことになる。
したがって、設問の事業資金の借入及び貸付事業については、その組合が当該事業年度においてこれを実施しないため、事業計画書及び収支予算書に記載されていないのであれば、借入金額の最高限度、一組合員に対する貸付金額の最高限度等に関する議決を行わなかったとしても、理事の任務過怠であるとして指摘する程の問題ではないと解する。
(2)その事業の実施が、翌事業年度ないし近い将来において再開される見込がある場合には、特に定款を改正して、当該条項を削除する必要はない。 Q40-2 組合事業の利用強制について
製氷業者において、組合員の製氷をすべて組合を通して販売する目的をもって事業協同組合設立の動きがあるが、これら事業につき次の点をお尋ねする。
(1)組合規約で「組合員の製氷はすべて組合を通じて販売しなければならない」旨の直販禁止を行うことは、独禁法上からも差し支えないか。
(2)上記の規約に罰則を付する場合とそうでない場合とでは、法的に効果は異なるか。
(3)販売価格は、組合自体が定める価格であるので、「価格協定事業」に該当しないと考えるがどうか。
(1)協同組合の事業の利用を組合員に強制することは、その行為の内容が独禁法第24条但し書に該当するもの、すなわち、「不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引上げることとなる場合」でない限り差支えないと解する。
したがって、ご質問のように組合規約に組合員の製品の直売禁止を規定することは、独禁法第24条の要件を充たしている限り差支えない。
なお、組合事業の利用を強制することは、組合員の自由を不当に拘束する危険があること、また、農協法第19条において組合が組合員と組合事業の一部の専属利用契約を締結する場合は、契約の締結は組合員の任意としていることから、農協法第19条を類推して組合は組合員が自由意思により専属利用契約を締結した場合のほか組合事業の利用強制はできないとする有力な説があるので、慎重に行う必要がある。例えば、組合規約により行う場合でも、組合員全員一致による議決を行う等の配慮が必要であろう。
(2)組合事業の利用強制が適法と解される以上、当然罰則を付けることは、差支えない。
(3)貴見のとおりである。 Q40-3 非出資組合の事業について
下記 1及び2の事業を、非出資組合が行い得るかどうか?
(1)共同職業訓練
(2)見本市の開催
(1)組合員の従業員を教育するため、共同職業訓練講習会を開催することは、中団法第17条第1項第1号の事業として行い得る。
(2)見本市を開催することは、第17条第2項の共同経済事業の範疇に含まれるものと解されるので、非出資組合で行うことは認められない。 Q40-4 販売業者の組合が行う委託販売について
○○品の小売販売業者で組織する協同組合であるが、組合員の取り扱う商品を組合員から委託を受けて組合事業として販売することは差し支えないか?
協同組合が事業の一つとして組合員の委託により、その取扱品の販売をすることは可能であると解するが、これも特殊の場合(例えば、一組合員で扱うには数量、金額が大きすぎる場合、取引相手が組合員の通常の取引先ではない場合、売れ残り品を出張販売する場合等)に限られるべきと思料する。というのは通常組合自体がこれを行うときは、組合の目的とする組合員の利益を図ることと相反すると思われるからである。なお、組合員の委託による販売であれば、員外利用にはならない。 Q40-5 食肉小売業者の組合の行う食肉生産事業について
食肉小売業を組合員資格とする事業協同組合が、これまで食肉の共同購買を中心に事業を行ってきたが、この度理事会で、組合員の取り扱う食肉を差別化し付加価値を高めるため、高級和牛肉の生産を組合で行い、組合員に供給したらどうかという話があった。
組合は、組合員の事業と関係のない事業を行うことはできないとされている小売業者の組合が、食肉の生産事業を実施することはできるか。和牛肉の生産は畜産農業であり、組合員資格である食肉小売業とは関係がないようにも思われるが。
事業協同組合が行える事業は「組合員の事業に関する」事業のみであることはご質問のとおりであるが、その意味は、組合は組合員の資格事業と同じ業種に属する事業あるいは近接の事業しか行いえないということではない。組合に禁止されているのは、資格事業について組合員が全く利用することのできない事業、あるいは利用が可能であっても実際には利用することのない事業を、組合が独自の立場で第三者のみを相手方として行うことである。
事業協同組合が、一般に、生産事業を実施できることは、中協法第9条の2第1項に明定されている。従って、商業者の組合でも、上述の意味で組合員の事業に関する事業であるかぎり、生産事業を実施できることは明白である。
和牛肉は、貴組合の組合員の取扱品であり、組合で行うその生産はまさに「組合員の事業に関する」事業であるといえる。また、消費者ニーズの多様化、高級化に対応した組合員の取扱品の差別化を図るため、これからの組合事業として積極的に取り組むべき事業だと考える。 Q40-6 電気工事業協同組合の建設業法に基づく許可
組合事業の一つとして内外線工事の共同受注を行おうとするときは、建設業法第3条第1項ただし書きに該当する場合を除き、同条の許可を受けなければならないが、同法第7条により許可を受けるには一定の資格を有するものの存在が要件となっており、組合の場合は役員及び職員が上記の資格を有すれば、その者が非常勤であっても許可を受けられると思われるが、この解釈でよろしいか?
協同組合が組合事業の一つとして内外線工事の共同受注を行おうとするときは、建設業法第3条に基づく許可を必要とし、その組合の役員及び組合の使用人のうちそれぞれ1人が同法第7条(一般建設業)(特定建設業においては第15条)に規定する許可の要件を備えなければならない。
この場合の役員及び使用人の勤務の態様は、運用上常勤であることを要する。 |
Q41 事業計画書及び収支予算書に関する質疑 | Q41-1 事業計画書及び収支予算書について
事業計画書及び収支予算書について、下記事項をお尋ねしたい。
(1)組合の設立認可申請書に添付する事業計画書の記載は、収支予算書に計上した事項については不要であるか?
(2)あるいは、事業計画書には、出資金並びに借入金で賄なうものだけを記載するのか?
(3)または、収支予算書、出資金、借入金に関係なく、事業別の資金量のみを計上するのか?
(4)収支予算書には、収入から支出を引いた残りを予備費として計上しているが、剰余金としてもよいと考えるがどうか?
(1)事業計画書と収支予算書とは、それぞれ別の目的をもって作成されるのであるから重複する部分があっても記載すべきである。
(2)設立当初は別として第2年度の計画書では組合に自己資金があれば当然それを調達源泉として賄なわれる資金の使途を記載すべきである。
(3)収支予算書では、事業別予算を計上することが理想的であるが、実際上容易でないので、事業別資金予算は事業計画書(経営計画)に記載するのが望ましい。
(4)収支予算を総合予算として、見積損益計算書、見積貸借対照表、見積資金収支表の作成であると解すれば剰余金として(計画利益額)計上する方が望ましいわけである。しかし、一般的にみれば、組合では官庁式の予算概念をとっているところが多く、剰余金ということよりも収支相償ううえで予備費として収支項目に含ませているようである。
Q41-2 事業用不動産取得決定機関について
当組合では、従たる事務所に充てるため350万円で店舗を購入したが、これについて中協法並びに定款上総代会に付議を要するとの規定がないため、役員会の議決のみで取得したが、これは、事業計画及び収支予算の変更を伴うものとして、あらかじめ総代会の議決を要するか?
本件については、定款に別段の定めがないかぎり、理事会の議決のみをもって購入したとしても、必ずしも違法とはいいがたいが、組合運営上からは、高額にのぼるような事業用不動産を取得する場合は、総代会の議決を経るべきである。また、その取得については、当然収支予算に計上すべきである。 |
Q42 剰余金処分に関する質疑 | Q42-1 登記剰余金の処分方法統の解釈について
(1)法定利益準備金、特別積立金の積立て及び法定繰越金の繰越方法について
事業協同組合、商工組合等(以下「事業協同組合等」という。)はその根拠法及び模範定款例の規定解釈により、法定利益準備金及び特別積立金の積立て並びに法定繰越金の繰越しに当たっては、当期剰余金を基に行うこととされているために前期からの繰越損失があっても当期において剰余を生ずれば、前述の諸費目の積立て及び繰越しをした後でなければ、繰越損失のてん補を行うことができないと解釈されている。
このため、事業協同組合等では、一時、当期剰余金を基に積立て及び繰越しを行った後、それを取り崩して繰越損失のてん補を行っている。しかしながら、農業協同組合、消費生活協同組合、漁業協同組合等では、それぞれの根拠法の規定においては、事業協同組合等と同様であるにもかかわらず、模範定款例の規定及び所管行政庁の解釈により、当期において剰余が生じても繰越損失がある場合は、まず、それをてん補することとしている。(したがって、繰越損失が当期剰余を上回っている場合は、前述の諸費目の積立て及び繰越しは行わない。また繰越損失のてん補後に残余がある場合は、それを基に積立て及び繰越しを行う。)
ついては、事業協同組合等においても、農業協同組合等と同様な処理が行える旨解釈することとしてよろしいか?
(1)従来より中小企業庁においては、模範定款例51条(法定利益準備金)、53条(特別積立金)及び54条(法定繰越金)の利益剰余金の規定においては、毎事業年度の剰余金として「当期業績主義」との解釈を採ってきている。しかしながら、農業協同組合、消費生活協同組合、漁業協同組合等においては、中小企業等協同組合と同様の法規定にもかかわらず、「繰越損失がある場合」には、それをてん補した後、なお残余がある場合に積立て及び繰越しを行っている。
したがって、今後は、事業協同組合等においても他組合との整合性及び剰余金としての性格上、貴見のとおり運用して差し支えないものと考える。
(2)特別積立金の取崩しについて
事業協同組合等の模範定款例で規定されている特別積立金は、毎事業年度の剰余金の10分の1以上を積立てることと規定されているだけでその取崩しについては何ら規定されていない。このため、特別積立金は、模範定款例の損失金の処理規定により損失の処理以外には、取り崩せないものであるとの解釈がなされている。
この結果、組合によっては、特別積立金の積立総額が出資総額を上回るほど多額となっても、損失が生じないため取崩しができない結果を招いている。
しかし、元来、特別積立金は、法律の強制しない任意的積立金であること、また法律の強制する法定利益準備金については、模範定款例の規定においてもその取崩し事由を限定規定していること等を勘案すると、特別積立金は、損失金の処理を主目的としながらも、それ以外の事由であっても総会の議決をもって取り崩すことができると解釈するほうが、現実の組合運営においても支障をきたすことがなく、妥当であると考えられるので、そのように解釈することとしてよろしいか?
(2)特別積立金は、御指摘のとおり、任意積立金的な性格を有しているものであり、何ら法的規制はない。したがって、その取崩しについても貴見のとおり「総会の議決をもって取り崩す」ことができるものと解される。
ただし、主目的が損失てん補であるので、それ以外の事由により取り崩すことは、次のような場合に限られるべきであると考える。
(イ)当期未処理損失がない場合
(ロ)当期未処理損失がある場合は、取り崩した資金によりそれをてん補した後、なお残余がある場合 |
Q43 役職員の退職金等に関する質疑 | Q43-1 理事の退職金支給に関する手続きについて
常勤理事に対する退職金の支給決定は、総会又は総代会の議決事項か?あるいは理事会の議決のみでよいか?
株式会社等においては、商法の規定により各会社の定款において、総会の付議事項となっているが、中協法には何らの規定がないか?
また退職金の支給に関し、期前において退職を予想していない場合に、中協法第51条の規定するところにより、収支予算、事業計画の変更を要するものとして、総会の議決を必要とするか否か?
中協法においては、商法第269条を準用していないから、法律上は理事会の決議で行うことを妨げない。しかしながら、事柄の性質上、理事会の決定では恣意的になるおそれがあること、商法との均衡等よりして定款に明記して、総会の議決事項とすべきであると思われる。
退職金である否とを問わず、支出をしようとする場合において、当該支出が収支予算において定められていないときは、原則として収支予算の変更について総会(総代会)の議決を要する。事業計画の場合も同様である。 Q43-2 役員退職金の算定法式について
役員は、職員と比較した場合、職務の内容、範囲、責任の度合いが異なり、職員の退職金支給基準を準用することは適当でなく、別個に支給基準を明確化することが必要とも考えられるが、反面職責の態度からみて単純なる年数計算等による基準は不合理な面があり、規定を設けず、勤務者の業績向上に寄与した功績の評量によって、適宜支給すべきか、貴見を伺いたい。
貴見のとおり、単純なる年数計算等によらず、その業績等によって適宜支給すべきものと思料する。 Q43-3 職員退職給与引当金について
定款例第58条(職員退職給与引当金)に「本組合は事業年度末毎に職員退職給与引当金として、職員給与総額の何分の何以上を計上する。」とあるが、これは定款に必ず設けなければならないか?
職員退職給与引当金については、絶対に本条を定款に設けなければならないものではなく、組合の任意である。従って、設けても設けなくても差し支えない訳であるが、職員が安心して組合の業務に専念するためには、本条を記載することが望ましい。 |
Q44 印紙税に関する質疑 | Q44-1 受取書の非課税の根拠について
事業協同組合の組合と組合員間における受取書については、印紙税法別表第一表第22号の非課税物件欄の規定により「営業に関しない受取書」に該当し、課税されないこととなっているが、その根拠を具体的に示されたい。
事業協同組合等の事業は、営利を目的としていないので営業ではないと解されるが、印紙税法においては、営業について特別の規定を設け(印紙税法別表第一表第22号)、事業協同組合等が出資者以外に対する事業を営業に含ませ、また、出資者が事業協同組合等に対する事業を営業から除外している。
また、事業協同組合が組合員に対する事業については、印紙税法に明文の規定はないが、営利を目的としていないから、当然のこととして特に規定を設けなかったものと考えられ、また、本来営業であるべき組合員が組合を対象として行う取引等を営業としていないこと等から、当然に営業ではないものと考えられる。
したがって、印紙税法上において、事業協同組合等の営業に関しない受取書として非課税とされるものは、事業協同組合等が組合員に発行するもの及び組合員が事業協同組合等に発行するものに限られてるものと考えられ、この解釈による取扱が一般的となっている。 Q44-2 脱退組合員の持分受取書に対する印紙税
組合員が脱退し、払戻持分として出資金を受け取ったときは、組合員資格を喪失しているため受取領収書には印紙税法が適用されるか?
印紙の貼付について、中協法第20条に定めるとおり、持分は組合員が脱退したときに、その請求権を生ずるのであるから、持分受領のときは、既に組合員ではなく、したがって協同組合員たる特典はなくなり、持分受取書には印紙を貼付する必要がある。 |
Q45 賛助会員制に関する質疑 | Q45-1 賛助会員制について
賛助会員制の導入を検討しているが、次の点についてご教示願いたい。
(1)賛助会員の資格に制限はあるのか。
(2)賛助会員の組合事業利用は、員内利用扱いとなるのか。
事業協同組合定款参考例により、賛助会員制に関する規定が定款例に次のように位置づけられている。
「 第7章賛助会員
(賛助会員)第51条本組合は、本組合の趣旨に賛同し、本組合の事業の円滑な実施に協力しようとする者を賛助会員とすることができる。ただし、賛助会員は、本組合において、法に定める組合員には該当しないものとする。 2賛助会員について必要な事項は、規約で定める。 」
この賛助会員制が定款例に位置づけられた趣旨は、組合が賛助会員制を活用して外部関係者を組織化することにより、その協力と理解を得るなど、最近特に重要性が高まっている組合と組合外部との交流・連携を促進しようというものである。したがって、単なる資金集めのためにこの制度を活用することはできない。
(1)賛助会員の資格は、定款例には、「本組合の趣旨に賛同し、本組合の事業の円滑な実施に協力しようとする者」となっており、このほか特に資格についての制限はない。
賛助会員の資格は、組合の実情に応じて定めることができるが、外部関係者を組織化することにより、その協力・理解関係の一層の増進に資するという賛助会員制の主旨に留意し、その範囲を逸脱しないようにすることが肝要である。また、賛助会員は法に定める組合員には該当しないので、注意が必要である。
(2)賛助会員は組合員ではないので、定款に定める組合事業を利用する場合は、員外利用に該当することになる。組合が賛助会員に対して行う利便の供与等の事業活動としては、例えば、(イ)組合が作成または発行する資料等情報の提供、(ロ)組合または組 合員との情報交換のための懇談会等の開催、(ハ)賛助会員に対する指導・教育、(ニ)その他賛助会員制の設置目的を達成するために必要な事業等が考えられるが、これらの事業活動は、あくまで賛助会員制の主旨を逸脱しない範囲で行うことができるものである。
また、組合が賛助会員に対して行うこのような事業活動は、直接の利用者が賛助会員であっても、その利用の態様が組合員の利用と競合する(組合員の利用に支障を与える)ものではなく、むしろ組合員への奉仕という組合本来の目的の達成のために必要な事業として行うのであるから、この場合の賛助会員の利用は、員外利用には該当しないと解されている(平成3年6月12日付3企庁第1325号、中小企業庁指導部長通 達「中小企業等協同組合法及び中小企業団体の組織に関する法律の運用 について」において、員外利用の概念が明示されているので、参照されたい。)
最後に、定款参考例では、賛助会員について必要な事項を規約で定めることとしているので、賛助会員制を導入する場合は、規約を設け、制度の内容を明確にしておくことが必要である。
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